たちぎれ線香


※ 上方落語。その中でも屈指の大ネタの話し。米朝さんの十八番であるが、こ
  の話しの難しさについて言いだすと、キリがないとのこと。


 昔は、芸妓の花代を線香の時間で計っていた。つまり、芸妓がお座敷に上がる
と、線香を1本立て、切れると幾ら幾らの花代がついた。そういう頃の話し。

 ある大店の若旦那がお茶屋通いが過ぎてしまい、親族会議の結果、心を入れ替
えさせるため、100日の間、蔵住まいということになった。
 この若旦那と相思相愛の芸妓・小糸は、若旦那が来なくなったため、毎日、若
旦那に文を出すが、店の番頭が隠していたため、返事が来ない。

 どうにか100日が過ぎ、やっと蔵から出してもらえた若旦那は、すぐに小糸
の家に行く。しかし、小糸は若旦那が来ないので、気の病を患い、若旦那があつ
らえていた三味線が届いた日、その三味線にどうにか一溌(ひとばち)入れただ
けで、息をひきとったという。

 若旦那は、小糸の仏壇に線香をあげ、供養の酒を飲んでいると、仏壇に供えて
あった三味線がひとりでに鳴りはじめた。
 若旦那はその三味線の音に耳を傾けていたが、三味線の音が急にやんでしまっ
た。糸が切れたのかと思い、おかみが仏壇を見たが、
 「若旦那、もうなんぼ言うても、小糸、三味線弾けしまへんわ」
 「なんでやねん?」
 「お仏壇の線香が、ちょうど立ち切りました」