題名のない番組(再録)

1968年11月6日放送の再録


♪ジャジャジャジャ〜ン(交響曲第5番)、続いて寄席の出囃子

菊地 題名のない番組
   さて、今夜も楽しいお便りを拝見しましょう。おしゃべりは、
米朝 桂米朝
小松 小松左京
菊地 菊地美智子です。
小松 なんで、あんたスポンサーつきまへんの?
米朝 いやまあ、そのことについて今日もたくさん心配して頂いたお葉書がぎょう
   さん来とりますけど。

    スポンサーの ない番組の さわやかさ

   てな句をくれた人もあるんやけどね。
菊地 (笑)いいですねぇ。
米朝 いいですねゆうたら、あんた、ここの会社、クビになるやわからんよ。
菊地 怒られる(笑)。
米朝 西淀川のさいとうさんゆう人がくれたんやけどね。
小松 頭でミッチーが「題名のない番組」とゆうやろ。なんとかの提供による「題
   名のない番組」。
米朝 「スポンサーのない番組」と、こうゆうたほうがいいかもしれん。
小松 いや、まあ、「どのスポンサーも提供しない題名のない番組」。
菊地 (笑)嫌な番組です。
米朝 ちょっと我々に1万円札のねぇ、ちらっとこう2、3枚見してくれたら、じ
   きにゆうけどねぇ。
菊地 もう、なんぼでも絶叫しますけど。
米朝 そんなもん、うっかりゆうたような顔して生放送で流してしもて、ああ、し
   もたてなことゆう手はあるんやけどなぁ、3円のおもらいでは。今日も3円
   来てましたけどねぇ。
小松 3円でっか。
米朝 3円ではちょっと。
小松 わしは、あれでんねん。あのう日本政府、総理府あたりが、もういい加減
   ね、なんとか表彰して。これだけ宣伝してんでっせ、あんた。
米朝 宣伝やろか?
小松 そらもう、そしられるのも人気のうちでっせ、あんた。
菊地 いや、そうですね。なんにもゆうてくれなくなったら。
米朝 いや、あのねえ、それはいいんやけど。
菊地 はい、はい。
米朝 まぁ、事件がちょっと多すぎましたやろ。
小松 あのう、満月城の歌合戦、違いまっか?
菊地 歌合戦? 池之坊満月城
米朝 あの、まあ、有馬でぎょうさん死なはったしね。
菊地 29人。
小松 満月の晩に……。
米朝 それからオリンピック終わったし、例の八海事件やとかねぇ、そういうのが
   たくさん来てますが、三木外相、前尾立候補という三木・前尾・佐藤の三派
   争いとか。三派全学連ちゅうのは、あっちにおまへんのやな、自民党。
小松 ああ、そうですなぁ、惜しいねぇ。
菊地 惜しいねぇって。
米朝 それから例の東大の大騒ぎ。京大はあれほど騒いでまへんなぁ。
小松 京大はえらい騒いでいまへんなぁ。
菊地 おとなしいですねぇ。
小松 関西系の大学ちゅうのはねぇ。
米朝 あすこまでいかんのやろと思う。
小松 東京はねぇ、ひとつはほんまに根無し草の若いのがあれだけ集まってまっ
   しゃろ。
菊地 はあ、はあ。
小松 関西はね、地元から通ってる人が以外に多い。
菊地 ああ、そうそう。地方から出てきているひと……。
小松 それからやっぱり関西の学生は割と冷静ですわ。
米朝 それからなんかねぇ。お前、何してんねんちゅな奴がおるんやな。
小松 そうでんねん、「題なし」に投稿してくるような。
菊地 そうそうそう、やっぱりちょっと余裕があるような。
小松 これはねぇ、もう僕の学生時分からですさかい。
米朝 はあはあ。
小松 ものすごい激烈なこと言って、今にもとにかくなんかえらいことが起こりそ
   うなこと言うんだ。
米朝 あのねえ、こんなん来てまっせ。

    良識は破れたり、正義は地に落ちたり。東大学長の辞任の弁、これなり。
    学長辞任、とうぜんなりと言えど、その理由、断じて肯ずべからず。
    すなわち、一躍の赤色分子に騒擾の根拠を与え、なおかつ、処分なし得ざ
    るの責めによりて辞せざるべからざるなればなり。

菊地 ああ、難しいですね、舌かみそう。
米朝 つまり、一躍の赤色分子に騒動の根拠を与えて、よう処分もせえへん責めに
   よりて辞せなければならないことになったと言うんやね。

    国立大学存立の根元、すなわち、国民辛苦の税によりて存立するを考察す
    れば、かくのごとき国費浪費行為、許すあたわざるなり。否、断固処分せ
    ざるべからざるなり。学生と自称する暴徒、並びに能力なき学長、ともに
    速やかに大学を去るべし、去らしむべし。

   というきつい意見が洲本のにしまさじさんという25歳の会社員の方から。
小松 えらまた難しいこと書く人がありまんなあ。
米朝 これ、もうちょっと判りやすう書いたほうが説得力がある……。
小松 そやけど、大河内はんは、あれ、これからどないしやりまんねん。
米朝 とにかくね、二転三転、態度を変えたことがあったらしいですね。それで
   ちょっと信用をなんか。
小松 もう、どこへ行く? 映画界入りして……。
米朝 傳次郎と。
菊地 大河内傳次郎。
小松 もう、丹下。□□□、丹下大工、丹下健三。丹下健三伝という奴、やるかも
   しれんな。
米朝 けどねえ、本当にあのう、今度の場合はもう学生を非常に支持したり、同情
   してたりした人達までが離れたように思う。
小松 大河内、あれがなんや?
菊地 お父さん? 大河内一男さん?
小松 お父さん、知ってはりますか? 大河内翠山□□□
米朝 少年講談を書いていた人。わたしはよう読んだな。
小松 幼年倶楽部で読んだ。
米朝 そうですかぁ。はぁ〜。
小松 だから、あの人も講談師かなんかになりはった……。
米朝 田宮坊太郎やとかねぇ。
小松 大河内傳次郎の声色で辞職の弁なぞ読んだら、そらまあ、学生の中に付いて
   くる奴、(物まねで)「わたくしは」ちゅな奴。
菊地 (笑)
米朝 もう大河内も今の学生、知らんわ。
小松 知らんなぁ、ほんと。
米朝 知りませんよ。あの人は無声映画のときの大スターでね、あの人が売り出し
   た当時にトーキーであったら、あかなんだやないかというくらい声の悪い人
   でね。
菊地 はあ。
米朝 けど、ほんとにちょっと、あれもあれなら、また、あの例えば我々の仲間で
   は、ルーキー新一事件とかね。
菊地 はあ、あれもねぇ、大変ですねぇ……。
小松 (物まねで)「いや〜ん、いや〜ん、いや〜ん」の誰かと思ったら、ああゆ
   う芸当もやりまんの?
米朝 ああゆう芸て。
菊地 あの人があんなことやるなんて。
米朝 しかしねぇ、あたしも、もうその、犯罪者というものに対して、何も言えん
   ようになってもたんやないかと思うんだ、今の日本政府は。悪いことしたっ
   て、その恩赦とか大赦とかで己の都合のいい奴だけ許すでしょ。
菊地 そうですねえ。
小松 そうでんにゃ。
米朝 この明治100年恩赦とゆうのでねえ、松原市のはしもとひさこさん、大淀
   区のやまむらまさはるさん、それから市内ロシア復活同盟ボインスキー・
   エッチコフやとかね。
菊地 ややこしい名前で。
米朝 大阪住吉の80年安保闘争準予備員とかゆうような、そうゆう人達からね、
   大赦、恩赦に関するいろんな意見が来てますがね。
小松 どうでっしゃろ。
米朝 もう、ほんまに、どうでも勝手にせいっちゅうわけですがな。これやったら
   ね、もうつまり法律なんてものは、自分の都合の悪い分は、もう自分の選挙
   前になったら許すと。それやったら、守れ、守れと法律を守れと言う資格な
   いやないかという結論になりますね。
小松 明治100年恩赦でこう泳がしておいてね、明治101年の大獄とゆうやつ
   で、また皆放り込むという、これどうでっか?
菊地 (笑)
米朝 明治101年の大獄を誰がやりますねん?
菊地 やる人がない。
小松 それはまぁ、やっぱりそら井伊掃部頭か誰か連れてこんとあかんな(笑)。
米朝 井伊大老。
小松 安保政治の大獄というやつで「安政の大獄」。
米朝 「安保の大獄」というやつねぇ。
菊地 なるほどねぇ。
小松 その1円、五つ書いてあるの、なんでんねん? それ、切り抜いたら1円に
   通用しまんのか?
米朝 絵の1円や。これはねぇ。「ミッチー、おまえ悔しくないか?」
菊地 はぁ、何にも。
米朝
    米朝も左京もちゃんとテレビのレギュラー持ってるぞ。題なしでテレビに
    出てないのはお前だけや。どや、ワシと組んでハンソンと水森亜土を蹴落
    として、お前あいつらの代わりに出演せえへんか? ええ返事待ってる
    で。
       ミッチーをテレビに出す会非常任理事・かめやますけお

   ちゅなけったいな……(笑)。
菊地 あんまり一緒に出る気せえへん(笑)。
米朝 一緒に出る気せえへんか?
菊地 そうねえ、かめやますけおさんではねえ。
小松 かめやますけおちゅのは、なんとなくタートルネックちゅう今はやりのやつ
   着てるような感じやな。亀、首出すなちゅな感じしまんがな。
菊地 (笑)
米朝 亀の頭はどんなかっこしてるやろ(笑)。
小松 タートルネックから出てる首ちゅな、やっぱりあれタートルヘッドという感
   じでんな。
米朝 これは、また手の込んだ……。
菊地 なんですか? それは。
小松 そらまあ手の込んだ。さんにち新聞、OBCさんにち新聞て何これ? あま
   にち新聞? 発行所・題名のないさんにち。ちゃんとガリ版でものすご綺麗
   に書いてある。
菊地 ソ連、人間宇宙飛行士打ち上げ。
米朝 写真なんかは貼ってあるでしょ。
小松 写真、張り付けでしょ。実際。これ、さんにち抄ゆうて天声人語欄。

    現在の社会を仮に正社会としても、我々から見れば邪な社会でしかないの
    だ。□□□ここにおいて我々があえて挑戦し、人間どもを狂気と錯乱の巷
    と化し、社会を一刻も早く自然の姿に帰す。そして、荒涼たる大地に立
    ち、我は叫ぶ。ミッチー、待ってろー。早くあの二人の狂人からミッチー
    を救わねば。ああ、ミッチー。

   って、これが天声人語やね。「祝い」という字を「呪い」という字に書いと
   るし、「贈る」という字を……。
米朝 それは校正部が悪いからですよ。
菊地 はあはあ〜、いや、……。
小松 でも、北海道新聞、北海タイムス、みんなお祝い広告出てまっせ。東奥新
   聞、河北新報、山形新聞、福島民報。はぁ、けったいな……。
米朝 産経新聞、一番に書いてある。
菊地 ああ、ほんと。この写真なんですか? 頭の毛の薄〜い人が写ってる。小松
   さん……(笑)。
小松 いや、まあ、おもしろないこと言うねぇ、実際。
米朝 薄なったねぇ、そういうと、お互い。
菊地 ねぇ、ほんとにもう。
米朝 本田プロデューサーもわたしも、ちょっと。
菊地 「題名のない番組」が「毛のない番組」になる。
米朝 ミッチーに関係のある奴は皆、毛が……。
菊地 そんなことない。
米朝 小米(故・2代目桂枝雀)もこの頃ぐっと抜け上がってきた。あんたと一緒
   に番組やってる人はみんな……。
菊地 わたし、何にも薄なっていませんよ。
小松 男の毛の成分を吸い取る魔女だろ(笑)。
菊地 やらしい(笑)。
米朝 ビタミンKとゆうのを取ってんやろ。
菊地 (笑)しょもない番組。
米朝 あのねえ、都城のさくまえてつろうさんがねぇ、こういう詩を送ってきまし
   たねぇ。「永すぎる裁判」と題して。

    我、十有五にして被疑者となり
    三十にして法廷に立ち
    四十にして裁判長惑い
    五十にして無罪を知る

小松 なるほどね。
菊地 なるほどねぇ。うまいですねぇ。
米朝 うまいねえ、これ。論語ですねぇ、これは。これは今日の傑作やと思います
   ね。
   北爆がまぁ一応停止ということになりましたが、これについて西宮のたかせ
   やすひろさん曰く、

    北爆停止、陰の立て役者に独占インタビュー
    「ワイが乗り出したから、すぐに止まったやろ。なんで、もっと、はよ、
    たのまんだんや」 ・・・ 荒船清十郎談

小松 (笑)
菊地 (笑)急行、停めるのと一緒に……。
   今夜の1曲目、おかしな。なんですか、これ? 洲本市のうえさきひろこさ
   んのご希望で「19回目の神経衰弱」。
米朝 つまりねぇ、カード、トランプ並べて「神経衰弱」という遊びがある、全部
   裏返しといて。あれを19回やったんですよ。
小松 そやろか?
菊地 そうですかぁ?
米朝 どっちが勝ったかという。
菊地 ローリング・ストーンズ。

   (「19回目の神経衰弱」の曲)

米朝 19回目の神経衰弱。
小松 どうでっか? その20回目の腎虚というやつを。
菊地 腎虚ってなんですか?
米朝 腎虚、知らない? この聴いている人の中に知ってる人、たくさんあると思
   うから来週の葉書を待ちましょう。
菊地 なんか、その文学的な言葉ですか?
米朝 そうですよ。もう非常に……。
小松 人魚と違うよ。
菊地 廃虚みたいなもん?
米朝 腎虚は、まぁ古典的な言葉ですから。
菊地 はぁ〜。
米朝 今週は読書週間ですので、推薦図書の解説をしますとゆうてね、しょうでん
   山の古狸ちゅ人が書いている。
菊地 いろいろ、なめとこ山の熊とかいろいろね、はい。
米朝
    おちくぼ物語
    米朝、海原小浜、岡八郎らの主人公が繰り広げる笑いと涙で綴った三代
    記。

小松 (笑)これはなるほど。
菊地 (笑)なるほどね。
米朝 よくできてるな。

    えいが物語
    サヨナラ、サヨナラ、サヨナラと言う人の解説。

菊地 淀川長治さん。
小松 なるほど。古典やな。
米朝 これ、武者小路さんやと思うのにねえ、

    おめでたき人
    読まれもしないのに、毎週せっせと葉書を書く人の物語。

小松 なるほど。
菊地 なるほどね。

    ガン
    煙草を吸いすぎて癌になったあるSF作家の物語。

米朝 森鴎外やないのや。

    路傍の石
    全学連に使用された石から人の世を眺めた本。

小松 なるほどね。
米朝 うまいねぇ、これは。

米朝 当世ことわざ集。滋賀県伊香郡の風の又三郎。

    目には目を 唇には唇を

小松 いいなあ。
米朝 □□□
菊地 えっ? なんでそんなんなるの?
米朝 オッパイにはオッパイをとか。
菊地 やらしいなぁ、あたし感心して聞いてるのに。
米朝 その次にねぇ、

    乳くりあうも 多生の縁

菊地 (笑)なるほどねぇ。
米朝 うまいなぁ、乳くりあうも多生の縁。

    学生に角材

   鬼に金棒やな。

    ミッチー憎けりゃパットまで憎い

米朝 これ、なんや?
菊地 どういう意味ですか、それ?
米朝 次がええなあ。

    遅かりし左京

菊地 ああ、これはいい(笑)。
小松 これは遅刻やな(笑)。
菊地 まだ、たたってますよ。
米朝 由良之助も感心しやるやろ。

    スポンサーは番組のかすがい

米朝 これ、ちょっと苦しいな。
小松 苦しいな。
米朝
    葉書出さずんばトランプを得ず

菊地 (笑)なるほどね。
米朝
    レギュラーは3円の得

米朝 これもいいねえ。
小松 それはええねぇ。
米朝
    吸う子は太る

菊地 (笑)吸う子は太る
小松 (笑)わたいのことでっか。
米朝 うまいなあ(笑)。
菊地 吸う子は太るはいいわぁ。
米朝 
    奥目にたたり目
    目の上の題なし
    ペッタンコもボイン

米朝 なんや、これ。「あばたもえくぼ」の洒落やて。
菊地 (笑)ひどい。
米朝
    泣く子とディレクターには勝てぬ

菊地 う〜ん、これもうまいですね。
小松 あのう、「遅かりし左京」ちゅな、この次、わたし遅刻したとき、やったら
   どうでっか?
   (以下、“ ”内は歌舞伎の調子で)

小松 “ミッチー、ミッチー、左京はまだか?”
米朝 “未だ参上、仕りません。”
小松 で、わたしが、“師匠〜。”
米朝 “左京かあ〜。遅かったあ〜。”

菊地 いい調子です。
米朝 アホらしなってきた。
小松 ほんま、今日はアルコールが入ってるさかい。
菊地 (笑)
米朝 軍歌「戦友」の替え歌ですけど、「軍」という字に「しんにゅう」が付いた
   ら「運歌」やねん。
3人 (笑)
米朝 誰やねん、こんなおかしな間違いしたのは。
菊地 おかしい。
米朝 しかし、これ、傑作。阿倍野のすぎもとちゅうじさん。「級友」とゆうんで
   すね、「戦友」の替え唄で。
小松 なるほど。
米朝
    ここは学校の帰り道
    離れて遠き試験場の
    あとに残りし あの友は
    今ごろ どうして いるのやら

    思えば悲しき昨日まで
    ネジリはち巻徹夜して
    あれやこれやとヤマをかけ
    テストに望む二人仲

    ああテストの最中に
    隣におった我が友が
    頼むよ答案見せてよと
    せつない顔の目で合図

    学則厳しい中なれど
    これが見捨ておかりょうか
    早く見ろよと答案を
    机の端に寄せたるや

    折りから起こる監視の目
    教師はようよう気が付きて
    カンニングするなと怒鳴りつけ
    友の頭を殴りたる

    答案用紙を取り上げて
    テストが終われば教員の
    部屋に来いよと注意され
    友の運命きわまれり

    試験がすんで日が暮れて
    先に帰ってる心では
    退学なんぞになるなよと
    思う心も情けなや

米朝 うまいねえ。
菊地 よう実感、出てますね。
小松 まだまだ、できそうやね。
菊地 本当に調子がいい。
小松 最後に父兄に手紙書くとこまで、できそうやね。
米朝 思わず落とす一雫。
小松 そこまで行けそうやね。
米朝 行くねえ、これは。
   これはねえ、姫路のやすぎのぶおさん。「金色夜叉」のパロディー。
菊地 熱海の海岸?
米朝
    北ベトナムの海岸爆破する
    南ベトナム・アメリカの二人連れ
    ともに攻めるも今日限り
    ともに守も今日限り

    解放戦線 破るまで
    何故にアメリカ待たなんだ
    戦いが嫌になったのか
    さもなきゃ お金が足りぬのか

    お金はたっぷりあるけれど
    貴国に平和を戻すため
    世論の教えに従いて
    共産ゆっかに折れてゆく

    いかにアメリカ南ベトナムは
    これでも一個の国家なり
    同盟の友を妥協させ
    平和を求むる俺じゃない

米朝 うまいなあ。
菊地 これ、おもしろいですねぇ。
小松 情景がまあ……。
米朝 こんなええ歌聞いたら、アホらしいて聞けんかもわからんけども。
菊地 本当ですねぇ。「シェリー」、フォーシーズンズ。北区南同心町のおかにし
   たくみさんのご希望です。

   (「シェリー」の曲)

米朝 名前のない葉書ですねえ。
菊地 消印もなし。
小松 □□□ 宇宙連邦 地球星 細亜国。亜細亜国の上の「亜」が抜けてるん。日
   本県 北郡 大阪梅田町。米朝・O・桂、左京・O・小松、ミッチー□□□。
米朝 OとCとはなんのこっちゃ。
   □□□
小松
    明治は遠きにありて思うもの
    そして、自民党と違反者が喜ぶもの
    よしや
    首相三選負けるとも
    恩赦を許すにあるまじや
    ひとり都の夕暮れに愚劣な閣議に涙ぐむ
    その心持て国民不在の恩赦をなくすべし
    明治100年恥かくなかれ

米朝 それに似たようなのが来てる。これはねえ、神戸のとしもとやすじという
   人。

    あわれ秋風よ、
    情けあれば伝えてよ。
    男ありて夕げに首相を狙いて思いにふける。

    首相、首相
    そがために多き札束ばらまいて
    首相を狙うはその男が国の習いなり。
    その習いを怪しみ懐かしみて財界は
    いくたびか多き札束を持ちて選挙に向かいけん。
    あわれ人に捨てられんとする首相と
    国民に背かれた議員と選挙に向かえば、
    金うすき親分を持ちし国民は
    小さき金を操り悩みつつ
    親分ならぬ男に1票をくれんと言うにあらずや。

    佐藤、佐藤
    佐藤苦いかしょっぱいか。
    そが男は熱き涙をしただらせて
    首相を狙うは、いずこの里の習いぞや。
    あわれ、げにそは問わまほしくおかし。

小松 ああ、「秋刀魚の歌」と言えば、秋刀魚高いですなぁ。
菊地 秋刀魚、高いですよ。
小松 首相なんかより秋刀魚のほうが値打ちあるみたいな気になるな(笑)。
米朝 ひょっとしたら。
小松 首相なんかより。
菊地 ああ、首相(笑)。
米朝 「選挙が近づいてくるとねえ、また、あの四国・本土の架け橋のことが騒が
   れている。今年の年末、来年の始めと、ずうーっと言われ続けてきたことか
   と。その騒がれる前は、必ず選挙があるときである。誰が得をするのだろ
   う。」徳島のとみたとしひこさんですね。
小松 なるほどねぇ。
米朝 選挙の前になったら、あの論議がぐ〜っと持ち上がるという。
小松 橋、どこ架けるか知らんけど……。
米朝 あれ、いつまでも決めんとおるというのは、一つの手やね。
小松 ほんまやね。実際。そのうち、知らん間にトンネル掘ってもてからに。
米朝 しかし、この番組、えらいことになりましたよ。天王寺区のいのうえたけし
   さん。

    題名のない番組の聴取者を許可制にせよ。
    わたしは、日本政府に、ラジオ大阪・題名のない番組聴取者を許可制にす
    ることを、法律に定めるよう強く要請するものである。その理由として
    は、同番組ほど近来の放送史上まれにみる教養番組はないと信じるからで
    ある。小松左京氏の『なんかしやがんねん』とか『バカにさらしとる
    なぁ』とかいう言葉の端々にも題なしの内容の格調の高さを感じることが
    できる。
    したがって、この番組を聴取する者には、相当な知性と教養が要求され
    る。反面、教養低い者がこの番組を聞くときは、ますますその知能は低下
    し、甚だしき場合には、精神の錯乱を起こす危険もある。そこで、刀剣や
    銃砲と同じく許可制にする必要がある。題名のない番組聴取希望者は、各
    区役所に米穀通帳を提出し、題名のない番組聴取申請書をもらい、ラジオ
    大阪で題なし聴取資格検査を受け、合格者のみに聴取資格が与えられる。
    受験料は3円、もし、この法律に違反した場合の罰金も3円にすればよか
    ろう。

菊地 なるほどねぇ。
小松 許可制といわんまでも、どうでっか、どうせスポンサーがないからNHKの
   向こうはってね、聴取料というの取ったら。
菊地 聴取料、取るの。
米朝 これだけ?
小松 ええ。
米朝 どうやって集めますねん。誰が? お宅、「題なし」聞いてますか?
菊地 聞いてますか?
米朝 そんなもん、聞いてるかいてゆうたら、そうゆう口の端では聞いてねんや
   ろ。
小松 それで、ちゃんと払ろてくれたトコは、DNBというマーク貼る。NHKの
   向こうをはって「題名のない番組」という。
米朝 タバコと、なんかとなんかとを。
小松 そうでんなぁ。□□□留守でもいいさかい。
菊地 留守ではちょっとね。
小松 NHKかてスポンサーおまへん、ウチもおまへんねん。
米朝 集めてまわる人の日当が出ますか? 3円で。
小松 いやぁ、まあ、そうでんなぁ。
米朝 1日に100件まわって100件から集めよ思たら相当な労力がいるわ。
小松 300円に上げましょか。
米朝 こっちはなんぼでも上げられる、相手が上げてくれへなんだら、どないも
   しょがない。当分はこう行かなしょうがない。
菊地 そういうことですねぇ。
小松 どうしても取りに行きまっさかいな。あたしは行きます。
米朝 あのう、心臓移植手術をした宮崎信夫君、ついに死亡。
小松 あれ、心臓のほう、どうなったんでっか? 人間生かすために心臓移植をふ
   んだか、心臓を生かすために人間を探す……。
米朝 そうそうそう。つまり、和田教授の態度に対してですね、いろんな賛否両論
   の意見が……。
菊地 批判もあるでしょうしねぇ。
米朝 批判もあるし、いやいや、これをやっぱり乗り切らないかんという意見もあ
   るんですがねえ、どない思いはります、あれ。
小松 心臓でっか?
米朝 やっぱり、あれはやはり何人か犠牲者が出て後に、やっぱり成功という段階
   になる……。
小松 人工臓器ちゅうやつのが……。
菊地 ああゆうのがうまいこといきやすいんでしょ。人工心臓、人工肺臓。
米朝 やっぱり、拒絶反応とゆうんですか、あれがねぇ。
小松 拒絶反応ちゅうたらウチの女房だけやと思てたら、そやないんだなぁ。
米朝 拒絶しますか、お宅は?
小松 えぇ、ときどきなんや機嫌悪いときは。
米朝 さよかぁ。
小松 何を拒絶するかというと、まぁ。
菊地 何を拒絶するのか詳しく聞きたいけど……。
米朝 泉佐野のくすはたまさしという人が書いてますねんけどね。

    ある歯科大学病院で日本で2番目に心臓移植手術を受けた若い女性患者が
    心配そうに医者に尋ねました。
    「先生、わたしの場合、きっと拒絶反応が起こるでしょうね?」
    「どうしてそんな心配するんですか?」
    「わたし、手術する前に20回もお見合いしてみんな拒絶してしまいまし
    た。」
    それを聞いた医者は顔色を変えました。
    「あんた、そんな心臓を持ってたんなら何もわざわざ取り替える必要ない
    でしょう。」

菊地 (笑)これはいいわぁ。
小松 (笑)これはようできてるなぁ。
米朝 なお、この医者は歯科大学であったために、歯医者(敗者)になった。
小松 なるほど。
米朝 人生の敗者というようなあれですかねぇ。
小松 なるほどねぇ。人工臓器ちゅうのは割とうまいこと、一番古いのは歯ぁで、
   一種の人工臓器です。
菊地 入れ歯。
米朝 入れ歯が一番古いですか。
小松 一種の人工臓器です。
米朝 メガネはどうでしょ?
菊地 メガネも一種の……。
小松 それでぇ、今まで入れ歯の発明者はヨーロッパやと思ってたら一番古かった
   の日本。
米朝 日本ですってねえ。
菊地 入れ歯、はぁ〜。
小松 柘植の台に蝋石の歯を入れて。
菊地 蝋石。蝋石って、あれでしょ? 道に書くやつでしょ。
小松 そうや。
米朝 あんたはそんなん知ってるとこみたら、かなり……。
菊地 いや、今でも売ってますよ、あんなもん。
米朝 この頃の子供はあんなことやるか?
菊地 売ってますよ、今でも。
米朝 やっぱ、ああゆうふうに用いるわけ? あれで人をツルンと滑らせたりね。
菊地 そうそう。
米朝 柳生但馬守が入れ歯をしてたという記録はある。
小松 それでね、それが一番古い。寛永でしょ。
米朝 寛永です。
小松 彼のお墓を移転させるとき、出てきたんだ。
米朝 ということはね、それ以前にやってた人があるに……。
小松 あぁ〜、そうでんなぁ。
菊地 ぜんぜん入れ歯なかったころは、どうしてたのかしら?
米朝 つまり、歯ぁ抜けたら、……。
菊地 何も食べられない。お粥しか食べられない。
小松 わりと新しい人工臓器がミッチーのやってるブラパットという……(笑)。
菊地 また、そんなこと言う。よろしい、もう。
小松 あれの中にミルク仕込んでおきゃあ、まあ人工臓器(笑)。
菊地 もう、けっこうです。すぐ、そんな話しになる、嫌い。
米朝 わたしはねぇ、ミッチーがぺったんこやなんとかいうの嘘やと思てた。隆隆
   たる……。
菊地 思てたて。
米朝 やっぱ、あれは人工臓器ですか?
菊地 もお、よろしい。時間です。
   それではお便りお待ちしています。宛先は、大阪市北区梅田町ラジオ大阪
   「題名のない番組」の係りへどうぞ。

♪ジャジャジャジャ〜ン、続いて出囃子、以後、交響曲第5番がBGM

菊地 皆さんからのお便りで構成する「題名のない番組」。使用レコードは、フィ
   リップスとロンドン。おしゃべりは、
米朝 桂米朝
小松 ええとこで切りやがって。小松左京
菊地 菊地美智子でした。