題名のない番組(再録)

1969年2月12日放送の再録


♪ジャジャジャジャ〜ン(交響曲第5番)、続いて寄席の出囃子

菊地 題名のない番組
   今週も先週に続いて防腐剤抜きの生々しいところをお届けしましょう。生放
   送です。おしゃべりは、
米朝 生の桂米朝です。
小松 ちょっとくすぶってる小松左京です。
菊地 (笑)菊地美智子です。
小松 半分薫製になっとる。生とはちょっと言いがたかった(笑)。
米朝 言いにくい、そら。そんだけタバコ、吸うたら薫製になりまっせ。
小松 さいぜん、この時間の始まるまえ、あそこでゴチャゴチャゆうてた黒が帰っ
   てきたん?
菊地 黒?
小松 ん、黒いの。
菊地 あの、あっ、向こうのスタジオで、水本さん。
米朝 あのアナウンサー。
小松 □□□よかったなぁ、よかった、ほんと、まぁ。
菊地 しょうがないですねぇ、あの人は相変わらずつまらんことゆうて、もう。
米朝 「左京よ、お前はアホか?」
小松 (笑)いきなりなんでんねん、ほんと。
菊地 ほら来た。アッパーカットで。
米朝 柏原の□□□ひでゆきさんがね。「先週の放送の一番最初に、『今日は最低
   の寒さですね』と言ったろ。最低の寒さとは最高の冬の暑さという意味であ
   ることが、判らないのか。それでも、ようSF作家などと称しているなあ」
   と。
小松 つまり、寒さが最低やから暑さが一番やとゆう。
米朝 そうゆうふうに解釈せないかんと、こうゆう。
小松 ゴチャゴチャいいな、あんた。
菊地 そういえばそうだけど。
米朝 今日は、しかし、そうゆうと、最低の寒さや。
菊地 そうですね、今日は最低の寒さ。
小松 今日はぬくいな。
米朝 東京はねぇ、あたし、今朝まだ東京におったんやけど、4月の気候やゆうて
   ましたで。
小松 こないだもなんか知らんけど、暑かった。□□□あの頃、ウチの梅がみんな
   咲いてバナナがなったど、ほんま。
米朝 嘘つけ……(笑)。
菊地 嘘ばっかり、ようそんなこと。
米朝 嘘と言えばねぇ、「嘘のいろいろ」というのを……。
小松 うまいこと(笑)。
菊地 (笑)構成ができてます。
米朝 ほんまに、神戸市の東灘区のいとうまさのりという人がね、

    ただちに関係方面を調査の上、善処致したいと思っております。
    今後、このような事件の絶滅を期する所存である。

小松 嘘に決まって……。
菊地 そんなこと、できるわけない。

米朝
    全機総入れ替え出血大サービス

小松 嘘やなぁ。
菊地 (笑)

米朝
    日頃のご愛顧にこたえ、謝恩大サービス
    ノーチップ制
    都心へ50分、文化の中心、近くに学校・団地あり
    夢ニマデ見タ、日本ヘコラレテ、トテモ、ウレシイデシュ
    巨匠、鬼才、感動、絶賛、不朽の名作

小松 (笑)
菊地 日本語っておもしろいなぁ(笑)。
小松 30分と見てられへんなぁ、そうゆうのは必ず。

米朝
    あ〜ら、今のところお仕事が私の恋人ですわ、という嘘。

小松 ミッチーの言いそうなことやな、これ(笑)。
菊地 あたくしもそうですわぁ。
米朝
    今夜、つき合いで遅なるでぇ     ・・・ 米朝の嘘
    発売と同時にベストセラー      ・・・ 左京の嘘
    初めてよ、こんなことするの、
     お母さんに叱られちゃうわ  ・・・ 中島美智子の嘘
    いやらしいわ、わたしボインよ ・・・ 菊地美智子の嘘

   ここ、ちゃんと使い分けてるところが、にくいなぁ、これ。
小松 なるほどねぇ。
菊地 ちっともにくいことないわ。
米朝 今日の大傑作。
菊地
    もし、万一、これがそちらへ着きましたら、どうぞ読んで下さい。きっ
    と、一生郵便番号などは書きませんから。用事はそれだけです。

小松 まぁ、ひどい奴がおるな。
菊地 兵庫県西宮市のやまざきよしひろさんでね、表が「ラジオ大阪、題なし」。
米朝 なんにも書いてない。
菊地 なんにも書いてないんです。
小松 はぁ〜、これで。
菊地 「大阪市北区」もなんにもなし。
小松 試してみたわけやな。
米朝 郵便番号も大阪市もなんにもない。
菊地 郵便番号も書いてない。
小松 これで着くんやったら郵便番号はなんでいる……(笑)。
菊地 ……一生書かないわぁ(笑)。
小松 なるほど、ひどいね、これは。
米朝 アホらしい手紙の最高やで、これ。
小松 それでもちゃんとなぁ。
菊地 だから、皮肉ですねぇ。
小松 ここの消印には「宛名には郵便番号を」ちゅう判が押してある(笑)。
米朝 下にね、「郵便番号を書きましょう」とこ、スジひいたんねん、わざわざ。
小松 自分は書いとるがな、自分の郵便番号。
米朝 自分の郵便番号、書いてあんにゃ、まぁ。「664」って。
菊地 ラジオ大阪、題なしでよう来ましたねぇ。
米朝 そうかと思たらねぇ、「大阪 梅田 ラジ大 題なし」ちゅうな(笑)。
小松 ラジ大題なし。これはまぁひどいな。
菊地 はぁ〜、なんという。
米朝 京都桂のひだかという人ですな。この人が書いてるのはね、「題なし七去」
   というの。
小松 なるほど。七去てなんか「七去三従」の?
米朝 七去三従の女性が、つまり、多弁なるは去るべしという……。
小松 「女大学」やな。
米朝
    されば、題なしに七去とて悪しきこと七つあり。
    一つには、本田はんに従わざる者は去るべし。

   本田はんやて(笑)。
菊地 あの人、そんな偉い人? しもた。
小松 七持つやな。
米朝
    二つには、乳なき女は去るべし。

菊地 ちちなきぃ?
小松 おっぱい……(笑)。
菊地 あっ、おっぱい。いやらしいわぁ。
米朝
    これ、聴取者はボインが好きなればなり。あるいは左京の腹にボインあら
    ば、ミッチーにボインなくとも去るにおよばず。

小松 (笑)
菊地 小松さんのお腹で代用してもらいます(笑)。
米朝
    三つには、この葉書を没にする者は去る。
    四つには、眼球深ければ去る。

菊地 がんきゅう?
米朝 眼ぇやがな。

    五に、梅毒などの悪しき病あれば去る。
    六には、多言口まめにて慎みなく物言い過ごすは、スポンサーもつかなく
    なり、題なしが台無しになるものなれば去るべし。

小松 なるほど。
菊地 も、だまってよ。
米朝
    七には、おもらいを盗む心あるは去る。

菊地 去れぇ〜。
小松 (笑)いや、こら、みんな去らんならんな。
米朝 それで、

    付録に、アメ公は沖縄から去るべし。

小松・米朝 (笑)
菊地 しょうもない付録がついて。
米朝 しかし、七去三従のパロディーまで来たんですが、□□□。
   「侍ニッポン」、箕面山の革命戦士。

    人が喜ぶ革命ならば
小松
    人民戦争が なぜ起きぬ
    伸びたあの髭 さびしくなでて
    安田の勇士は 苦笑い

   今日はレコードいらんで、レコードいらんで。
菊地 レコードやめましょ、曲も生で行きましょ。
米朝 ところがね、「大江戸出世小唄」てな古いのも来てるん。
菊地 あぁ〜、高田浩吉さん
米朝
    金沢の□□□は 雪起こし
    落ちてくジェット機 風まかせ
    ええ しょんがいな
    ああ しょんがいな

    自衛隊とは 何物だ
    自己だけ守った パイロット
    ええ 腹が立つ
    ああ 腹が立つ

    国を守るとは うぬぼれな
    国民さえも 守れぬに
    ええ けしからん
    ああ けしからん

    雨が降ったら そのときは
    俺の涙と 思やんせ
    ええ ナンセンス
    ああ ナンセンス

菊地 (笑)ナンセンス、ナンセンス。
米朝 日本開放戦線やて。厳しいですなぁ。
   「とめてくれるな、おっかさん」のパロディーまできてる(笑)。
小松 (笑)
菊地 まぁ、新しいとこもいいとこ。
米朝
    とめんといとおくれやす
    おかあはん
    足のこっぽり泣いている
    舞子京大どこへ行く

菊地 なんですか、それ(笑)
小松 京大や、京大のあれや。男東大のうて舞子京大や。
米朝 小松さん時代の京大は舞子はんとイチャイチャできましたか?
小松 できまへんでした。銭のうて。そんなもん、ぜんぜんあきまへん。
米朝 近衛文麿さんが若かりし頃ぐらいにさかのぼるとね。
小松 行けば、大事にしてくれたらしいんですけどねぇ。こっちはとにかくコンプ
   レックスで、そんなもんよう行かんかった。
菊地 そやけど、三高の学生さんということで、あれでしょ?
小松 昔はお風呂入ったときにねぇ、これ見た奴がおんねん、先輩が。銭湯入って
   行くときにね、「出世前!」ちゅうと、もうそれで「よろします」。
菊地 「出世前」ゆうたら。はぁ〜。
小松 出世前やちゅうねん。
米朝 うれしいねぇ、そうゆうのはねぇ。
菊地 今でもそういうの、とおらへんかしら。
米朝 う〜ん。
菊地 小松さんがゆうても、あかんでしょ(笑)。
小松 それは、なんや?
菊地 え〜と、「落ち葉」よりベルレーヌ作。

    春の日の
    アポロ11号の 失敗の
    身にしみて感じるよ ざまあみろ
    失敗の声に 世の国民が
    顔色変えて 涙ぐむ
    過ぎし日の 大惨事
    失敗と けなされて
    ここかしこ 定めなく
    逃げ回る 飛行士よ

小松 11号、失敗したんか?
米朝 11号て、まだないんと違うか?
菊地 11号、まだでしょ?
小松 まだですよ、あんた。
菊地 「もうすぐ実現するぞえ」って書いてありますね。
米朝 むちゃくちゃや、こんなもん、誰が。
菊地 かたやまさん。
米朝 岸和田のかたやまさんやな。
小松 ケチつけよんねん。かわいそうにねぇ。
菊地 おかしいと思た。
米朝 「別れの一本杉」もおますよ。

    泣けた 泣けた
    こらえきれずに 泣けたっけ
    恩赦に漏れた 悲しさに
    別荘の二号も 泣いていた
    議事堂裏の 石の栄ちゃんのよう
    恩赦漏れ

三人 (笑)
菊地 なるほどねぇ。
小松 あほらしくなって……。
米朝 滑床山一家のパットマンX。
菊地 ややこしい。
米朝
    原潜よ来い 早く来い
    アメリカかぶれの 栄ちゃんが
    日本の安い 武器持って
    戦争したいと 待っている

小松 (笑)
菊地 厳しい。
米朝 「春よ来い」やねぇ。

    ペッタンゴン「胸板が締め付けられるわ」
    オクメゴン 「目が出るほどびっくりした」
    スモッグゴン「早いこと煙に巻いてもたろ」

小松 「げんせん」てあれですか、原子力潜水艦でっか?
米朝 そういうことです。
菊地 なんだと思って……。
小松 源泉徴収や思てねぇ、もう。
菊地 (笑)そろそろ3月が。
米朝 今のは、橋本のやまぐち□□□さん。
小松 どっちも反対したろか。一緒に行ってもいけるように。
米朝
    さらば時計台よ
    また来るまでは
    しばし別れの
    涙の□□□
    バリケード見れば
    安田講堂に陽が登る

   あばしりごくどう。悪いペンネームから……。
小松 西独のスチューデント・パワーのとき、プラカード持って、ポリ公が来よる
   でしょ。プラカード持って「ポリ公帰れ」って行きよんでって。それで、警
   察がワッーと押し寄せするのね。退去せよってかかろうとすると、くるっと
   ひっくり返って後ろむいて逃げてくとね、プラカードの裏っかわに「警官の
   給料上げろ」って書いてある。
米朝 ほんと、かいな。
菊地 本当やったらおもしろい話しだけどねぇ。
米朝 洒落てるね、それはそやけど。
菊地 なるほどねぇ。
米朝 今日はねぇ、岡山のみずしまあきらさんがこの間の例の磐梯ホテルの……
菊地・小松 はあはあ。
米朝 徒然草55段、「家の作りようは夏を旨とすべし、冬はいかようなるとこに
   も住まる」というのがあるでしょ。これ、ちょっと難しいけど、よ〜く出来
   てる。

    ホテルの作りようは安全を旨とすべし。危険はいかなる場合にも困る。火
    事になって狭き通路は耐え難きことなり。新建材は危なげなり。床のすべ
    りやすいは、遥かに危なし。
    細かなるものを見るに、非常階段は梯子よりもよし。天井の吹き抜けは2
    階に燃え移りやすし。建て増しは用なきところを作りたる。見るもおもし
    ろく、人を殺すには役に立ちてよし、とぞ皮肉をとばし、あいはべりし。

小松・菊地 なるほどねぇ。
米朝 うまいですねぇ、これ。
小松 しかし、あのおかげで満月城のほうは、ほっとしとるやろな。
菊地 あっちのほうへ噂がワッーと行った……。
米朝 1/2になったからね。
小松 これで、まぁ、とにかく人の噂もあちらへ□□□。
米朝 ところがねぇ、磐梯ホテルの場合、金粉ショーちゅな付いてたでしょ。
小松 あれがアホや。実際ホテルでまぁストリップやら火事になってもた。
菊地 そうそうそう、金粉ショー。ほんとしょうもないことするんじゃない。本当
   のストリップやわ、全部焼けて。
米朝 みずしまあきら君はねぇ、徒然草236段、「丹波に出雲というところあり
   て」、あの狛犬の後ろ向きになってるの。そのことに候ちゅて子供が悪さし
   てしょがないちゅあれや。

    磐梯に熱海という所あり。温泉も掘りて、ホテルを作れり。金粉ショーの
    なにがしとか見せるところなれば、冬のさなか、お客あまた連れだちて、
    「いざたまえ、温泉につかりたまえ、金粉ショー見せん」とて打ち揃いて
    行きたるに、ショーの最中、松明に引火してゆゆしき火事起こしたり。
    我さきに逃げるとき、有毒ガス渦巻きて非常口も開かぬ狭き廊下は迷路の
    ごとく入り組みたれば、お客の一人いみじく感じて、「あなめでたや、こ
    のホテルの建ちよういと珍しく古き故あらん」と涙ぐみて「いやに殿原、
    殊勝のことはご覧じとがめずや。無下なり」と言えば、各々怪しみて、
    「まことに普通の建築とは異なりたる」、「都のつとに語らん」などいう
    に、お客の一人、なおゆかしがりて通りかかった従業員を呼びて、「この
    ホテルの建てられよう、さだめて習いあることにはべらん。ちと受けたま
    わらばや」と言えば、「そのことに候、さがなき経営者のつかまつりけ
    る、奇怪に候ことなり」とて誘導もせず、自分一人で逃げ出しにければ、
    お客の感涙いたずらになりにけり。

小松 これはひどい話しや、実際。
菊地 そのことに候。
米朝 長いけどなぁ。
小松 ひどいパロディーやねぇ。しかし、そこまでいくと痛烈やねぇ。
菊地 うまいこと、そやけど、ちゃんとなぞってますねぇ。
小松 ほんまにまぁ。
菊地 原典をよっぽど……。
米朝 岡山のひねくれおという人はね、

    これがまあ 旅の憩いか 金粉ショー

小松・菊地 (笑)
米朝
    沖縄を 返してくれろと 泣く子かな

   ゆうのんもある。
菊地 (笑)
小松 泣く子かなと言えば、ちびちゃんが穴はまって凍死。
米朝 2歳。いちおうね、布施警察のあれでは、事故死であろうということになっ
   たんですけどね。
小松 だけど、あれ、子供が裸でバタバタやってるちゅの見てた人が、あとで、あ
   のとき見たちゅてあとから届けた人がおるちゅねん。
菊地 どうして、また、そのとき助けなかった……。
小松 そのとき、助けてやればいいのにね、実際。
菊地 現在はそういう時代ですかしらねぇ。
小松 寒稽古でもやらしてる思てるのやろか。
米朝 寒稽古。
菊地 2つよ、だけども。
米朝 冬中、ずっと裸で育ってた人もありましたわなぁ。
小松 ああ、そやねぇ。そういう子供が、あんた、オーバー着て死んどったらどう
   なるかなぁ。
米朝 それこそ、もう、不思議やなぁ。
菊地 え〜、これは「全学連篭城の歌」。島崎藤村の「千曲川旅情」のパロディー
   ですねぇ。

    東京なる 安田のほとり
    ガスしろく 教授悲しむ
    隊をなす 機動隊消えず
    放水も 避けるによしなし
    ベニヤ板の 盾の後ろに
    目に痛く 催涙ガス流る

    固き ゲバ棒はあれど
    母に満つる 嘆きも知らず
    浅くのみ 人は霞みて
    ヘルメットの色 わずかに青し
    報道陣の群れは いくつか
    投石の 道を急ぎぬ

   延々とありますけどねぇ。
小松 あのねぇ、騒ぎのときに何もせんと見に行く連中ねぇ、あれ、昔、見学連て
   言ったらしい。
菊地 「けんがく」って見るほう?
小松 うん、見学、見学連。
米朝 なるほど。
小松 最近、うまい言葉、作りよったね、学生が。「ゲバ亀」ちゅうの。
菊地 ああ、なるほど。
米朝 覗きに行っとおる奴。
菊地 それはいいわ。
米朝 若い人には、このデバ亀をよくご存知ないけどねぇ。
小松 いや、だから、その若い学生がこさえよった。
米朝 けど、ゲバ亀、うまいねぇ、これは。
菊地 ゲバ亀はうまい。
米朝 うまいと思たとこで。
菊地 え〜と、西宮市笠屋町のおおたまりこさんのご希望です。リー・マイケルズ
   の「ラブ」。

   (「ラブ」の曲)

米朝 「沖縄連作」。都城のさくまえてつろう。

    沖縄や アメは東に 支那西に

小松 なるほどねぇ。
菊地 アメリカと支那ねぇ。
米朝 うまいねぇ。
小松 なるほどねぇ。
米朝
    基地殿と 背中合わせの 寒さかな

   これもうまい。
小松 これはうまいねぇ。
菊地 基地殿と……。
米朝 木曾殿と背中合わせの……。
菊地 はぁはぁはぁはぁ。
小松 この人は本格的に俳句やってるんちゃう。いや、本格的やないやろな。どう
   せパロディー(笑)。
米朝 本格的に作らしたらぜんぜんあかなんだりして。
菊地 (笑)
米朝 これ、昔、「めくら小せん」と言われた噺家の廓噺の名人が、神田の須田町
   「ゼム」という胃腸の薬買うてねぇ、「ゼム君の申され候」という前書き付
   きで「仁丹と 背中合わせの 寒さかな」と詠んだのがあったけどねぇ。
小松 こちらのは「木曾殿」やから……。
米朝 そうですよ、うまいですよ。
菊地 基地殿と 背中合わせの ………
米朝 寒さかな。

    起きて見つ 寝て見つ基地の 広さかな

小松 なるほどねぇ。
菊地 (笑)なるほどねぇ。
米朝
    反対闘争 今日はどこまで 行ったやら
    ノー ノーと 言えど使うや 守礼の門

小松 なるほど。
米朝 これ、「応々と 言えどたたくや 雪の門」という、あれ去来やったか、誰
   やったか。芭蕉でしたかな。「猿蓑」か何かにあると思うんやけどねぇ。

    これがまあ ついのすみかか ああ こしゃく

小松 ああ、なるほどね。
菊地 (笑)
小松 これ、うまいねぇ。
米朝 パロディーばっかり読んでいるけどね、これだけのもの読まなんだったら申
   し訳がないような気がすんやけどなぁ。
   「古今和歌集」の序文ですねぇ。東大阪市のくわきりょうぞうさん。「大和
   歌は人の心を種として」という。

     「古今馬鹿集 題なし連中」
    パロディーは、人の噂を種としてよろずの言の葉とぞなれりける。世の中
    にある人、事、わざ、繁きものなれば、その揚げ足を見るもの、聞くもの
    につけて言い出せるなり。金に泣く政治家、安田講堂に住む三派の声を聞
    けば、生きとし生ける物、いずれか噂を立てざりける。

    デモ来ぬと 目にはさやかに 見えねども ゲバ棒の音にぞ 驚かれぬる
    世の中に 絶えて大学 なかりせば 親の心は のぞけからまし

小松 なるほどね。そらそうだろうな。
米朝 それからね、紀貫之、「土佐日記」の初めですよ。なんとかして「ののしる
   うちに夜更けぬ」という初めのところね。

    ある人、参議院の6年果てて例の汚職など皆し終えて、逮捕状など取りて
    住む館より出でて刑務所へ行くべき所へ渡る。かれこれ知る知らぬおくり
    □□□にくみくる人々なん別れ易く思いて日しきりにとかくしつつののし
    るうちに夜更けぬ。

菊地 皆、し終えて(笑)。
米朝 例の汚職など、皆、し終えて。うまいなぁ(笑)。
小松 なるほどねぇ。
米朝 うまいよねぇ。
小松 う〜ん、しかし、こんなもん、学校の教科書でやったら生徒はよう憶えるや
   ろなぁ。
菊地 (笑)
米朝 そうですねぇ。これを憶えなんだら、お前、おもろないんやど。
小松 (笑)
菊地 そやけど、こうゆうの試験の点はいいのかしら?
小松 判らん(笑)。
菊地 (笑)判らない。
小松 あかんと思うけどなぁ、ワシは。
米朝 ワシはあんまりええことないと思うけど。
小松 しかし、こうゆう才能のある人は、今の教育で□□□ようても悪ても。
菊地 そうですよねぇ、そんなもん、試験ぐらいどうってことない。
米朝 そうですよ。
菊地 「本日は三人様に相談にのって頂きたくペンをとりました。」
小松 おっ、身の上相談だな。
菊地 「小生、あと数日で大学を受けるしがない男でございます。相談というの
   は、東大入試が中止に決定した日、早速、先生に相談に行くと、先生は即座
   に『君の頭なら絶対に心配はいらん』ということでした。
   さて、これをどう受け取ったらいいか、今、大変に迷っております。なにと
   ぞよいお答えをお願いします。」
   え〜と、神戸区東灘区の黒木ひかるのヒモのささきけんいちさん。
米朝 そらもう、おまはんはもう安心してたらええんやと、どっちゃに……。
菊地 (笑)君の頭なら絶対に心配はいらんというのが……。
小松 黒木ひかるさんのヒモゆうたら、どうゆうことで。明蝶はん……。
米朝 明蝶はんと張り合わんならん。
菊地 三角関係になるわけですか?
米朝 しかし、ま、近ごろ、□□□の結婚問題では、あっと言わしたほうですね。
小松 そうですな。
菊地 いろいろおもしろいの来ましたね、最近は。
小松 東大入試が中止に決定した日に行って、先生が君の頭なら心配はいらんと。
菊地 あんさん、どうしなはれゆうたらいいんですか?
小松 中止になってどうしましょか……。
米朝 どこへでも行けると意味なんか。
菊地 よく解釈すれば。
小松 どうせ、どこへも行けんとゆう……。
米朝 ヒモのほうも、もうアカンのやで、あんた。
小松 まぁ、しかし、あれでんぁ、君の頭なら機動隊に殴られても心配はいらんと
   ゆう意味かもしれんな(笑)。
米朝 骨格が丈夫やとゆう意味かも……。
菊地 あっ、それが一番あたってるみたいで(笑)。
米朝 奈良市の大和の若大将とゆう人から。

    相手変われど主変わらず
     ・・・屋上へ逃げる者変われど、追う機動隊変わらず。東大から関学へ

    プレハブ団地に変われど、苦情変わらず
     ・・・千代田台団地

    痴漢の相手変われど、荒木一郎変わらず

   なんや、これは。
小松 (笑)
米朝 そやけど、まぁ、あれですねぇ。
菊地 ひどいことですね、あれは。
小松 ほんとにつまらんなぁ。おっかさんが泣いているよ、あんた。泣いてくれる
   な、おっかさん。
米朝 背中の一郎が泣いている。
菊地 ナニが泣いている。
   え〜、それでは、今日はちょっとおかしいですね。1曲目が「ラブ」で、そ
   の次が「オール・マイ・ラブ」なんですけどねぇ。
米朝 プロデューサーもおかしなってんやて。
菊地 ちょっと頭おかしいん違う、陽気のせいで。
小松 陽気のせいやろなぁ。まぁ、春先ちょっと早いけど。
菊地 ちょっと木の芽どきが早いんですけど、堺市のやすだももちさんのご希望で
   す。クリフ・リチャード。
小松 色キ○チガイ陽気やな。

   (「オール・マイ・ラブ」の曲)

米朝 関学のことでもめてますねぇ。

     「関学闘争にからむ3つのミステリー」
    その1
     封鎖中の神学部へ行って門を叩いたけど、開けてもらえなかった。
     マタイ伝に「叩けよ、さらば、開けられん」とあるのにおかしい。

    その2
     試験を受けに来た学生の中に高校野球の選手がいたんで、激励するため
     に「来年もまた来いよ」とゆうたら、危うく殺されかけた。

    その3
     入試前は、入試実施せよ、機動隊歓迎。入学1年後、入試阻止、機動隊
     粉砕というのはおかしい。

   西成区のなかひら君がゆうてるんやけどねぇ。
   また、関学の入試風景を(高村)光太郎はんの「五重塔」のパロディーで、
   これねぇ、洲本市のにしまさはるさんや皆ようできてるしね。
   「りゅうねんらい」とゆう平民新聞のパロディーもよくできてるし、寝屋川
   のたけうちさんっとゆう人の「涙の季節」のパロディーもようできてるけ
   ど、今日、読む間がないわ。もう、ええのが多いから。
菊地 そんなしたら怒りますよ。
小松 こちらにもおまっせ。関学の和歌でやってる□□□和泉市のかどばやしのぶ
   こさんって読むのかな。「□□□国文科、20歳、独身、子供1人、未婚、
   美人」やて。独身はまぁ、未婚……、ああそうか。
菊地 わたしと一緒。
米朝 まぁ、それ、ええがな。
小松 これ、子供1人てどうなる……。
米朝 どうでもなりまんがな、子供は産もうと思たら産めるんや。
小松 ひょっとしたら、その人はマリヤ様(笑)。
菊地 (笑)
米朝 その子供はキリストかもわからん。
   しかしねぇ、この番組でいっぺん言いたかったことに、米作らなんだら金く
   れるちゅうの……。
小松 あれは、まぁ米作ってもろて、作らんでもろて、まぁ。
菊地 作らへんかったら、またくれるという話。
小松 百姓は穀潰しやな、ほんまに。
菊地 そんなことゆうたら怒られる。
米朝 ほんとにねぇ、日本の農政とゆうのはゼロですね、これでは。
小松 なんか、お米の配給通帳を……。
菊地 米穀通帳をまた新しく作って。
米朝 新調して。何千万かいる……。
小松 何すんね、それ。
菊地 2400万いるんですって。
米朝 今、外食券を持ってってそこらの食堂で「これでお願いします」出したら向
   こう困りよるやろねぇ。
小松 それとも、いっそ外食食堂ちゅなこさえたらどうだ。そこで、昔みたいな雑
   炊かなんか出したら。そいで、サクラに並ばせておいたら、あと並びよるや
   ろ。
米朝 しかし、まぁ、今、日本は天下泰平ゆうてるけど、どうもいろいろ考えたら
   何もかも最低みたいな気がするんですなぁ。
小松 あんなにしかしまぁ、ほんとめちゃくちゃやなぁ。今に政府の奴、皆、目ぇ
   つぶれると思うな。あんなに、まぁ米、粗末に……。
菊地 もったいないことをして。
米朝 菩薩様のねぇ。お米はねぇ、「八十八」と書くんやから。八十八人の手がか
   かっているというぐらいのものを、ああ粗末にして、なんや知らんけど、金
   ばっかりやって。
小松 ほんとやねぇ。
菊地 そんで、そのお米の通帳作るゆうのも法律があるから作らなしょうがないと
   いう理由で作るんですねぇ。
米朝 この間、あんた、どっかの団地で集団で闇米こうたでしょ。それを警察へ米
   屋がゆうてきたけど、取締ようがないと。□□□したら米屋全部を挙げんな
   らん。あの法律がすでに死文化されてんにゃから、それを変えてくれなしょ
   がないとゆうて警察のおまわりさんさえゆうてはんにゃから。察の旦那がた
   さえ。
小松 いっちょうどうでっか。古米で道路でもこさえよったらどうや。
菊地 ああ、東名の残った所をお米で作る。
小松 そうだ、お米で作んねん、まぁ。
米朝 そのほうが安あがる。
小松 それでやっときゃ、いざ戦争になりゃ、それ食えるしなぁ。昔は、あんた、
   壁食うたんですよ、壁土を。篭城した……。
菊地 なるほどねぇ。それ、コンコン剥がしていって。
小松 壁土ん中に干し飯なんか入れてたことあるらしいです、塗り込めてあった。
菊地 戦争のために?
小松 ために。
米朝 焚書坑儒のときには、書物を塗り込めたりしたしねぇ。
小松 そやから、あれで道路こさえて、いざ第3次大戦になったら、みんな道食う
   とんや、まぁ(笑)。
米朝 ミッチー食うてんねやないで(笑)。あんた、食われてしまう。
菊地 いや〜な気持ちになってきた。
小松 まぁ、政治家なんか砂利でも食いよるんやから、まぁ。
米朝 そうですねぇ。まぁ、ほんとにセメントでも食うた人があったしねぇ。何で
   も汚職では食い物にできるんやから。
小松 それとも、□□□あたりのお寺に分けて、舎利やゆうて。
米朝 舎利やとゆうて。舎利骨を、あんた、ガラスの容器に入れて。
菊地 舎利やねぇ、なるほどねぇ。
米朝 大変なもんですよ、それは。
小松 本当にねぇ。
米朝 だから、ほんとに、この題なしもいつまで続くか判らんけども。
菊地 毎週、そんなことゆうたら……。
小松 余命いくばくもない、なんか知らんけど、スポンサーなしガンとゆうガンに
   かかって……。
菊地 また、話がどんどん転移していって。
米朝 □□□ガンとゆう。
小松 あのう、とにかく、まぁなんか哀れなってきたな。
菊地 のんきなことゆうてますねぇ、もう、ほんとに。
小松 まぁ、とにかく、どうせ先がないんやから言いたいことゆうて。
米朝 佐藤さんとどっちが寿命が長いかと張り合うつもりやったけど、あの□□□
   には勝てんですねぇ。
小松 我々は子会社がスポンサーがついてくれりゃもっと伸びるけどな。
米朝 ガラッと態度が変わるよ、スポンサーによっては。
菊地 もお、そろそろ時間です。
   それでは来週もまだ大丈夫です。お便りお待ちしています。宛先は、大阪市
   北区梅田町ラジオ大阪「題名のない番組」の係りです。

♪ジャジャジャジャ〜ン、続いて出囃子がBGM。その後、交響曲第5番。

菊地 題名のない番組。今夜はこのへんで。使いましたレコードは、ロンドンとオ
   デオン。おしゃべりは、
米朝 桂米朝
小松 小松左京
菊地 菊地美智子でした。