題名のない番組(再録)

1969年3月26日放送の再録


♪ジャジャジャジャ〜ン(交響曲第5番)、続いて寄席の出囃子

菊地 題名のない番組
   なんか終わりが近づくにつれてお葉書の量もたくさんになってきました。今
   夜のおしゃべりは、
米朝 桂米朝
小松 小松左京
菊地 菊地美智子です。
小松 ようけ来てまんなぁ。
菊地 はい、すごいですよ。
米朝 まぁ、たくさん頂いたけども、ほとんどがこの番組がなくなるとゆうこと惜
   しいとか、いかんとか、もう、ほんとに9日で止めるんやったら、いよいよ
   ここを封鎖するとか。やるんやで、嘘やないで、脅かしじゃないないぜゆう
   のんもあるし。
小松 おもろそうや、わいら見に来よう。
菊地 私も手伝う。
米朝 スタジオ、封鎖すると。それから中には、2週間伸びた、3月いっぱいでし
   まいやゆうてて9日までやる、また、いつもの手やろ。
小松 そして、9日になると、4月30日などと言い、それが……。
米朝 延々たったら……。
菊地 ほんとは今月いっぱいで終わることになってたんですけど、スポンサーのご
   好意によりあと2回……。
米朝 嘘つけ、スポンサーあらへん。おらへん。
菊地 なかった。(笑)。
小松 誰や、スポンサー? わたいらか。
米朝 署名運動までしてくれた人。
菊地 署名、続けなさい。
小松 はぁ〜。
米朝 あんまり仰山書いてないわ、13人ほどやけどね。
菊地 (笑)
小松 そりゃあかんなぁ。いやぁ、まぁ、いかに題なしが人徳がないかちゅの丸わ
   かりやな。
菊地 当人同士が惜しがってるという。
米朝 それから、死亡通知がたくさん来てるしねぇ。
菊地 黒枠ですね。
米朝 まぁ、そのほか、もう中には、もう、あのう。
小松 なんぞ、おもろいの一つや二つ読みなはれ、あんた。そら、なんぼなんで
   も。
米朝 いや、それもそやけどね、これを読んで、あれを読んでいかんちゅうの。こ
   んなんがあるわ。尼崎のもりたよういちさんってかたはねぇ、

    友達から「題名のない番組」とゆう奇想天外な番組があることを聞きまし
    た。これから毎週水曜の夜が楽しみです。

小松 な〜に。
菊地 あぁ〜。
小松 皮肉な言い方や、これ。
菊地 嫌みねぇ。
小松 ねぇ〜、嫌みやなぁ。
米朝 そうゆうのもあるしね、このさい、本田プロデューサーは責任を取って辞職
   すべきである。
小松 はぁ〜。
菊地 なくなることに?
小松 う〜ん。それで、誰をプリデューサー代行にすんねん。
米朝 いや、代行もあったえ。代行代理もあったしねぇ。
小松 代行代理補佐という。(笑)。
菊地 補佐待遇なんて……(笑)。
小松 (笑)
米朝
    題なし廃止に反対し、ストライキをしようじゃありませんか。
    では、米朝、左京はハンストに、ミッチーはゼンストになってください。

小松 (笑)
菊地 嫌らしいわ、えっち。(笑)
小松 いやぁ、我々は上半身脱ぐだけでいいけど、ミッチーは全部脱ぐんか。
菊地 まぁ、あんまり見たくないわ、小松さんのハンストなんてあんまりみたくな
   い。
米朝 泉南のやまもとかずのりさん。ハンストちゅうのはご飯を食べないハンス
   ト、それから煙草を吸ってはいかんエンストとかね。
小松 そう言えば、なんか止めたら焼身自殺するけども、熱いんで食いすぎ自殺を
   やるとゆうのがありましたなぁ。いやぁ、まぁ、食いすぎ自殺だったら、
   やってみたいなぁ。
菊地 それやったら、やりたい。
米朝 左京暗殺計画ちゅうのもあるしね。
小松 ほう〜、そうでっか。
米朝 大体、これは陰謀であると。この番組をあっちの「008」の方へ持ってい
   くつもりやとかね。
菊地 はあはあ、ありましたね、先週。
小松 ジャリ番の?
米朝 それから中には、これで私はやっとできるようになったとか、それから放送
   終了の真相は、ある日、ラジオ大阪に大衆浴場業環境衛生同業組合より苦情
   が舞い込んだ。
   最近水曜日、午後11時近くになると、銭湯がガラガラになるので、いろい
   ろ調べたところが題なしの影響である。この状態が続くと、またまた入浴料
   金を上げねばいけない。
   とゆうので、組合の圧力に屈服してやね、この番組を止めるんやて。
菊地 お風呂屋さんが手ぇ出してるわけですか。
小松 「君の名は」……。
米朝 天王寺のそねざきしんいち。
小松 まぁ、これだけまぁゴマすってくれたら、当人達はいい気持ちになるけれど
   も、陰でホンマにどんな顔してけつかるか、ほんま。
米朝 「こらー! ここの社長出せー」ちゅうのもあるし、「ドアホ、どついたろ
   か」ゆうのんもあるしな。
菊地 ガラ悪い。(笑)。
小松 そういや、まぁ、ほんとにまぁ当人達に惜しまれながら止める番組てな珍し
   いなぁ。(笑)。
菊地 (笑)。争議がない。
米朝 OBC殿、本田殿、いやさ三人、久しぶりだなぁといくところなんやけど、
   そうやないねん。

    42年9月に死の縁をよろめいてた男が、現在なんとか元気になったの
    は、この番組のおかげです。今、最後の段階、仕上げの時期になってんの
    に、なんでこの番組がなくなんねや。わしを殺す気か?

小松 ほんまかいな、そら?
菊地 ほんとかもしれませんね。
小松 この番組が、しかし、人の命、救うなんてこと、ありえますか?
米朝 そやけどねぇ。
菊地 そらやっぱり、こんなん聞いていたらアホらして死ぬ気になれない(笑)。
小松 (笑)。そらまぁ、そうやな、実際。あんなバカゆうてても生きてられるの
   に、なんでわしが死なんならんねん思たら、生きる意欲はわくわな、そ
   りゃ。
米朝 まぁ、そうゆうことも考えられますけども、大体、そやけど、この番組は、
   今まさに死にたい、いや、死のうと思てる、自殺しようと思てる人には、よ
   ろしいけど、元気な人にはどやろなぁ?
菊地 どうでしょうねぇ。
米朝 おおいに世の中のために働こうなんか思てる人は、もういっぺんに、
小松 働く意欲を失い、死にかけてる奴は生き返り。
菊地 東大に入る意欲をなくし。
米朝 「むすんでひらいて」の節で、それを歌うてください。
菊地 はい、1、2の3。
小松
    止めると言って また 続けて
    スポンサーないと言って 言い訳して(言いにくいな、これ)
    また 止めると言って
    驚かすけれど その手はくわん

菊地 うまい、うまい。
米朝 「その手は上に」ちゅうところがうまいとこ。堺のわだはんちゅう人。
菊地 あ〜、CMパロディーも先週来てましたね。また、やらしいの来てる。
小松
    美智子ビの おっぱ見れば ぺたチョビレ
    □□□やりすらの やっぱペタペタ

   大体、まぁ、判るわなぁ、これ。
菊地 どうして、なんで判るんです。帰ってください。そうゆう葉書はいっさい没
   やのに。
小松 そうやねぇ。
米朝 そうかと思たらねぇ、池田のこうやまきさんがね、
小松 おじんでっか。
菊地 おじんなんて……。
米朝 (地蔵)和讃をね、「OBC題なし和讃」。
   これはこの世のことならずと違う。
菊地 リンてない?
小松 これで。
米朝
    これはこの世のことにして
    華の都の大阪の

   (「チン」という妙な音)
米朝 あるよって。(笑)。
菊地 どっかいいのないかしら。

    OBCは題名のない番組が死出の山路の八丁目
    あと、二丁目でパッとあの世へ蒸発していく物語り
    聞くにつけても哀れなり

   長いなぁ、そやけど。
小松 長い台詞、さっきから聞いてたらおもろない。この番組済んだら、わたいら
   3人死ぬみたいなことゆうてるけど、ま、どうゆう気やろ。
米朝 いやもう、我々も死ぬことになってまっせ。
菊地 でも、あとの商売考えてくれた人もいますしねぇ。
米朝 そうゆうのもあるけどね、あの世へ行ってしまうと。これは宮崎県のさくま
   えてつろう氏はやね、三途の川ってゆうのは、3本川があって、つまり、目
   まで深い川が米朝用で、煙草を吸う口までの深さの川が左京用で、もちろ
   ん、胸までの深さがミッチー用。
小松 (笑)
菊地 やぁ〜、天まで言われてる。
米朝 地獄に落ちたら、赤鬼、青鬼、黒鬼になるんで、向こうへ行って「戒名のな
   い番組」とゆうのをあの世からやるちゅうの。
小松 (笑)。浮かばれんな、戒名がなかったら。
菊地 どういう番組になるんだか。
小松 今日は、しかし、止めるなちゅやつの他に、やっぱり最後になると、お貰い
   がようけ来てまんなぁ。
米朝 お貰いきてまんにゃ。これがねぇ、やっぱり、例によってクラス会費を送っ
   たとゆう。
小松 なんや、なんや、それかいな。学期末になるとね、年度末なると、よく来
   る。
米朝 その封筒、どっか行てもうたがな。
小松 なんでんねん。
米朝 あれまた、プロデューサー、どっかに直しとんのや。
菊地 なにしろ、たくさんありましたね。
米朝 570円、住吉中学やったかな。
小松 くれたんですか?
米朝 200円送ってきた。おっつぁんが送ってきた。
小松 ああ、さよか。
菊地 いかけやのおっさん?
米朝 違いました。堺でした。住吉中学は昔でしたな。堺のねぇ、2年5組一同
   ちゅう、堺市三国ヶ丘町。
小松 500なんぼ。
米朝 570円ですわ。
小松 ほう。お貰いも積もり積もって、それが3万なんぼになってるらしいねぇ。
菊地 え〜とねぇ、貯金してあるのが3万2000円で、バラ銭が3000円ぐら
   いありかしらねぇ。
小松 どこにやりまん? どこへやんのかな、これ。
米朝 それ、今、考えてますねん。これ、我々でワーッと使こうてまうかゆう意見
   も出たんやけどね。
小松 どこぞ、しかし、今日3万で、……。
菊地 小松さん、いつもそれ、ゆうてますね。あたしが一番反対してます(笑)。
小松 いやいや、米朝はんとな、米朝はんと幽霊施設ゆうのこさえてさ、2人で。
菊地 幽霊施設?
小松 それで、その施設に寄付さそちゅのどや。
菊地 寄付したことにしてトンネルする。
小松 いや、我々の……。
米朝 どうゆう施設?
小松 まぁ、中入ると、肥満児と奥目と、それからまぁペッタンコの治療施設とゆ
   うやつ。
菊地 (笑)。重症肥満児施設。
米朝 トンネル会社。
小松 重症ペッタンコ施設。
菊地 うるさ〜い(笑)。
米朝
    政府のしてることを 我々もしてみんとてするなり。

   とゆう、土佐日記
小松 そうやぁ。そこへ寄付するとゆうことになって、ちゃんとこっちが領収書出
   しゃあ文句出まへんやろ、別に。
米朝 大体、法律のほうはそんなことでええらしいですな。
小松 う〜ん、お役人がやってんの、わしらもやらな損やな、実際。同じ飯食てど
   こ違うやな、ほんま。
米朝 ま、3円とか1円とかゆうのも、ぎょうさん来て……。
小松 3円、わいのでっせ、わたしのでっせ、3円。どうゆう訳か知らんけど、朝
   出がけに見たら、玄関のとこに、おかきと3円置いたった。あれ誰の……。
菊地 (笑)。自宅の?
米朝 自宅の? むちゃくちゃなのがおんのやなぁ、また。
菊地 とうとう、箕面まで持って行く。
小松 子供のもんやないやろと思たから、まぁ置いてきたけどねぇ。
菊地 その3円ゆうのはやっぱり。
米朝 □□□のでばかめ。なんじゃ、こらぁ。
   卒業、もう嫌やねん、ああ、「春暁」。あ、猛浩然か。

    学生 卒業式を覚えず
    処処に罵声を聞く
    夜来 妨害の声
    証書を破ること 多少ぞ

   なるほどねぇ。
小松 早稲田の卒業式でどつきあいしてまんなぁ、壇上で。
米朝 そうですなぁ。
菊地 はぁ、卒業式はどこも大変ですね。
小松 一番最初、中学がすごかった。それから高等学校なってね、大学や。
菊地 下から順番に。
米朝 今度は、上からなってきて、このまた、だんだん下へ降りてきて。あのう、
   卒業式はねぇ、まだ、いまんとこ純情らしい。この間、我々の仲間に「かみ
   きりへい」とゆうおっさんがおった。あの人がある学校の中学の卒業式の余
   興に、紙切りを□□□。いろんな注文を切り抜くと、ワーーッと受けるちゅ
   う。全部先生のあだ名やった。
小松・菊地 (笑)
米朝 それが卒業式の謝恩会かなんかやで。仰げば尊してな……。
小松 大体、しかし、あれですなぁ。一番初めに始めたの議会ですな。あの、大人
   が始めてそれから段々□□□、それからその大学やったね。
   わたいらもどうでっか、4月9日、止めるとき、最後んときに、どつきあい
   をやる、本田プロデューサーどついてもて。
菊地 誰がだれを?
小松 えっ?
菊地 3人で本田さんを?
小松 それで、そのどついてる誰でもいい、最後に1人残った奴が勝ちとゆう、プ
   ロレスの余興でようやるやないか、バトルロイヤルちゅやつ。
菊地 しょうがない(笑)。
小松 しかし、議会も天皇陛下が勅語読むようになって治まったんでしょ、そうで
   もない?
菊地 治まってません。常任委員会かなんかもめ……。
小松 もめてんの?
菊地 うん。
米朝 それは開議式か開会式か?
小松 開会式なん。
米朝 え〜と、どこそこの県知事のなにが代理ゆうたら、ワ〜て笑う。市長さんが
   出席なさるはずでございましたが、なんとかと、ワ〜と笑うとゆう卒業式は
   長岡でね。
小松・菊地 (笑)
米朝 やっぱし、□□□。そら無理ないと、私らもつまりばかばかしと思てやけど
   ね、それを向こは正直にゆうてるだけやと。卒業式を考え直さないかんと父
   兄までが言い出したんですから。
菊地 ほんとにおかしい、むなしいもんですね、あれはねぇ。
小松 それでも、昔、泣いてましたぜ、よう。
菊地 いちおう、泣いたもん、あたしなんか。
米朝 あれは、そのねぇ、やっぱり舞台効果……。
小松 玉ねぎ持っていこか。
菊地 ムードにね、ちょっと、こう。いや、玉ねぎなくても、ムードで。
小松 ムードで泣いた?
菊地 なんとなくね。嫌〜な先生とでも別れるのは悲しかった。
小松 嫌な先生とも別れるの悲しい?
菊地 悲しい。
小松 題なしはどうや?
菊地 題なし? 題なし、最後んとき、あたし泣きます、派手に。(笑)。
小松 (笑)。偉いなぁ、まぁ。
菊地 泣いたらレコード売れる世の中やしねぇ。
米朝 ミッチーは泣くわ、左京は笑うわ、わたいは怒るわ。もう3人上戸ですな。
菊地 (笑)。めちゃくちゃ。
小松 (笑)
菊地 はい、それでは1曲目です。京都府相楽郡なかにしまさのぶさん。17歳の
   かたのご希望で、「月影のランデブー」。麻里圭子の歌です。

   (「月影のランデブー」の曲)

米朝 名文句集とゆうのがありますよ。私が調べに調べた名文句をここに書きます
   と。

    昭和25年4月19日、藤沢鉱工品貿易公団総裁、1億円に上る公金横領
    の早船事件で、「女中のつまみ食い程度だ」。

小松 1億2億は女中のつまみ食い。
米朝
    昭和26年10月27日、池田総理大臣、「アメリカなどのように麦を食
    うのはむしろ1等国である」

   「貧乏人は麦を食え」のあと。

    昭和27年2月、ある私立中学入試口頭試問より
    「君は、何故この学校を志願したの?」
    「あれっ? この学校、募集してるんじゃないの?」

菊地・小松 (笑)
米朝
    「岩手県は何故人口が少ないと思いますか?」
    「馬が多いからです」

小松 (笑)
菊地 (笑)。うまい。
米朝
   昭和30年4月30日、千代田区議候補・高島象山、落選の弁より。

    「君は確かにすれすれで当選と出たのだが」
    「占ったのは一度きりだ。そう何度も占えるものではない」

小松 高島易断の人。
米朝
    昭和30年10月14日、裸体主義者代表世界会議の決議より。

    「裸体主義運動だけが戦争をなくすることができる。なんとなれば、およ
     そ軍服なしでは、兵隊も戦えないし、裸でいれば、敵味方の区別がつか
     ない」

菊地 (笑)
小松 (笑)。その代わり、男と女の間に戦争が起こるかもしれんなぁ、実際。
   ミッチー、やろう。
菊地 嫌よ、そんな。
米朝
    昭和30年12月14日、ヒチコック監督、来日中の談話より。
    「わしだって人並に、死と税金が一番恐ろしい」

    昭和32年3月、チャタレー事件の有罪確定のときの伊東亭の言葉。
    「田中裁判長が信仰する旧約聖書などもわいせつ性が強い。まず、旧約聖
     書を裁判したらどうだ」

    同年、10月17日、花森安治、岸首相の作り笑いを批判す。
    「政治家ならいい政治をすることだ。そうすれば、作り笑いをしなくたっ
     て独りでに人気が出る。作り笑いや振り手で『岸さ〜ん』と国民が黄色
     い声を振り絞ると考えているんなら、てんで僕たち甘くみてなめてるこ
     とになる。失敬千万です」

菊地 ああ、これは栄ちゃん(故・佐藤栄作元首相)にも通じますねぇ。
小松 栄ちゃん、笑へんな、あんまり。
菊地 あっ、そうか。最近は虫食いの顔してる。
米朝 いや、地方へ行ったらときどきね。

    昭和33年2月2日、東京宝塚劇場炎上、負傷した客の話し。
    「舞台の裾のほう、右から左へ火花のようなものが走った。ミュージカル
     にしては、おもしろい趣向だと思った。やがて、しばらくして本物の火
     事だと判った」

小松 (笑)。ま、のんきな奴がおるな、実際。
米朝
    昭和34年3月27日、東龍太郎、都知事に立候補。
    「事前運動なんて言いなさんな。映画だって予告編があるでしょ。あれで
     すよ」

菊地 これもうまい。
小松 (笑)
米朝
    昭和35年10月24日、池田首相、
    「確かにムードが大切だ。まず、私が姿勢を正さなければ」と低姿勢を取
     っている。

    昭和37年1月27日、衆議院本会議で、池田首相の答弁を「街角で売れ
    残りの風船を声をからして売っているようなものだ」。
    この皮肉に対して、「立派な風船売りになってみせます」。

小松 (笑)。それ、誰が言ってる?
米朝 池田総理が。
菊地 国会の答弁としておもしろいですねぇ。
小松 うまいな。
米朝 これは、うまい。
小松 いいなぁ、実際。
米朝
    昭和38年1月19日、故・吉田茂氏、自著の出版記念会で、
    「これを本にしたらと言われたが、こんな固いものを読むバカはいないと
     言った。今度は、出版祝賀会を開くとゆうので、そんな所に集まるバカ
     はいないと思っていた。
     しかし、こうして見ると、日本には割り合いバカが多い」。

菊地 (笑)。痛烈だな。
小松 (笑)。ひどいね、あの人も。
米朝 あ〜、なるほどねぇ、大正区のしんかわよういちさんて人。
小松 よう、集めたね、しかし。
菊地 あれがありませんね。あの、一つくらいいいじゃないかゆうのは。
小松 ああ、そうだ。
米朝 あれは名文句やったなぁ。
小松 オー、ミステイクがあったしなぁ。1億2億は女中のつまみ食いってとき、
   女中の志望者が増えたろなぁ。
菊地 女中はよかったなぁ。
米朝 どこの女中やろ、そうゆうのは。
小松 すごいね、実際。ジャクリーヌ・ケネディーかな感じが。落ちぶれて女中に
   なってんだな。
菊地 (笑)。オナシスさんの女中。
米朝
    最終回の録音を取りおえし本田プロデューサーの心境を鴎外の「舞姫」
    託す。

    録音をば、早や取り果てつ。放送室の卓(つくえ)のほとりはいと静かに
    て、蛍光灯の光の晴れがましきも、いたずらなり。今宵は録音ごとにここ
    に集い来るレギュラー連中もホームに帰りて、ここに残りしは余一人のみ
    なれば。

小松 なるほどねぇ。本田のおっさん。あら、真っ先に帰りよる、あのおっさんな
   ら。
菊地 (笑)。
米朝 わたいら雨に濡れて待ってるのに、本人だけ傘持ってたら、さっさと帰りよ
   る。
小松 ほんまや。
米朝 それで、この「舞姫」の、この人名前書いてないけどねぇ、いくつか来てま
   すねん、実は。やっぱり、教科書に出てきたんですな。
小松・菊地 ああ、そうか。
米朝 斎藤茂吉の「赤光」もね、やっぱり来てるとゆうのは、やっぱり出てるんで
   すね。
菊地 そこは強いわ。そら、今、習ってんですもんねぇ。
小松 あのう、今になって思たら、惜しいことした。高等学校、中学校の教師用の
   教科書ちゅう奴、あれ、そのとき置いときゃ、恥かかんですんだのにな。
菊地 (笑)、全部調べてね。録音の前に全部……。
小松 たまにゃ、わしの……。
米朝 洲本市のにしまさはるさんでした。
菊地 はい。
小松 まぁ、「星落つ 寒風 珍宝」、「星落秋風五丈原」のパロディー。
菊地 はあ、はあ、はあ。
米朝 あの土井晩翠の。
小松
    ウスリー河畔の 夜は更けて
    陣雲暗き 珍宝島
    じゅんかの音は 繁きて
    斃死し領土は 守れども
    国境線の 決まりなく
    相互の信頼 今はなし
    中ソの仲は 悪かりき

米朝 けったいな歌やなぁ。
小松 (笑)。これ、けったいな歌なん。司馬遼太郎さんに節、教えてもろたら、
   あの人。
米朝 教えた人が悪いん。
小松 そな、えら音痴。ああ、聞いてるかな、司馬さん、聞いてら、怒られる
   なぁ。
菊地 音痴に教えてもらって。音痴が音痴に教えてもらって。
小松 この人はなんや。え〜、「東京都千代田区1番地 宮城内 裕仁様方 中核好
   きよ」。この人、京大に入ってんでしょ。
菊地 裕仁様方?
小松 う〜ん。
菊地 □□□
小松 ここに記念品、送たろか、記念品。
菊地 (笑)
米朝 題なし創刊号が来とるわ、これ。
小松 はぁ〜。
菊地 週刊誌。
米朝 汚い週刊誌。河内長野のおおうら君とゆう人は、もうなんじゃかんじゃ書い
   てあるけど、一番ええのは、このミッチーのピンナップ。
菊地 わぁ〜、すごいな。わたしのとそっくりだな。やらしい。
米朝 また、おっぱいの大きいヌードやな、これは。
小松 裏のアリナミンが本物ちゅうのがおかしいな、この広告。
菊地 なんか言いたそうですね〜。(笑)。
米朝 世界名言集。今のんと違うやつ。京都市東山区のおおにしたかしさん。

    現代日本民主主義とは、
     自民による
     自民のための
     自民の政治

小松 なるほど、「人民による」をねぇ。
米朝 はぁ、なるほどねぇ。

    人は敗れたゲームから教訓を学びとるものである。
    学生は敗れた闘争から教訓を学びとるものである。
    私は勝ったゲームから教えられたことはない。

小松 自民党の代わりに「たみん党」ちゅうのこさえたらどうや?
菊地 自民党とたみん党?
小松 う〜ん。
米朝 たみん党の「た」はどんな字?
菊地 自他ともに許すという。
小松 まぁ、自ずから民の奴と、他によって民の奴と。
菊地 あ〜ぁ、もう、ちょっと、ほんとに。
小松 はい、どうぞ。
菊地 (咳払い)。もう、2曲目です。神戸市兵庫区のおかもとかずおさんのご希
   望。ザ・シャドウズの「春がいっぱい」。

   (「春がいっぱい」の曲)

米朝 あのう、ナイジェリアの方はねぇ。
小松 ビアフラでっか?
米朝 もう、すごいですなぁ、あれ。
菊地 すごいですねぇ。
米朝 しかし、ようがんばってるなぁ、あれ。ベトナムよりもっとえげつないがん
   ばりですな。
小松 どうでっしゃろ。そのビアフラの人ねぇ、どうですか、ちょっとニューギニ
   アに留学させたらどうでしょう?
菊地 ニューギニアへ?
小松 ニューギニアの□□□でロックフェラー3世、食うた奴。
菊地 人食い……。
小松 あの連中に人の食い方、教えたらだいぶもつやろ。
菊地 そんな、やらしい。ロクなこと考えない。
米朝 しかし、まぁ。
菊地 あれ、あんなことゆうて。悲しいよ、お腹すいて。
米朝 子供のガリガリにやせた赤ん坊の写真、写したりして……。
菊地 あんなのペッタンコどこらやないですよ。
小松 そうや。
菊地 けど、市電がなくなってねぇ、そいでなんか売りに出すわけでしょ、部品や
   なにか。
米朝 ああ、その大丸、もうえらいことやったんやて。あれは準備を整えてなかっ
   たてことが軽率でしたなぁ。殺到することは、僕はわかってたけどね。男女
   の店員が、おびえて恐いとゆうて逃げたと□□□、職場放棄やて。
菊地 やっぱり欲しがる人、多いんですねぇ。
米朝 ガァ〜て駆けつけてガッとそのへんのもん掴んで離さないですな。
小松 題なし、終わったとき、どうでっか? OBCのスタジオとですなぁ、マイ
   クやなんか売りに出すゆうたら、どんだけ□□□。
米朝 そのへん題なしと関係ない。題なしと関係あんのミッチーぐらいのもんや。
菊地 え? いや、あの全部出演者を売るんだったら。
小松 いや、今、□□□、放送でねぇ、題なしで使ったマイクロホンやなんか売り
   に出しますゆうたら、まぁ、OBCめちゃくちゃや。
菊地 また、殺到して。
小松 最後に□□□したら、便所も何もバラバラになって。
菊地 小松さんの吸いがらとかね。
小松 そうだ。米朝さんの使った金隠しとか。(笑)。
米朝 市電の□□□は安いからね。□□□高こぅしといたら、そうでなかったんや
   ろけぢねぇ。マニアがよう……。
小松 買って何しまんねん、□□□するんですか。
米朝 いや、もう回数券から何からもう全部集めてる人もあるんです。
菊地 はぁ。
小松 はぁ、そいで、集めてどないしまんねん。また、自分で市電やろうちゅ気が
   ある?
菊地 (笑)
米朝 まぁ、ああゆうマニアの気持ちはわからんけれども、まぁ、しかし、集める
   と、もう1つの□□□になるし。まぁ、それに市電てな本当に愛された乗り
   物でね、市電てのは事故少なかったんやないか。絶対安全性がある。トラッ
   クぶつかったてあんまり命に別状ないし。
菊地 頑丈にできてる。
小松 トラックは市電の網みたいなん付けるべきや、前の。すると、ガーて出てく
   る。
菊地 ガッとすくえる。
米朝 それから市電の停留所の大きな名札がね、あれで地名がわかるしね。
菊地 何町ってゆうのが。
米朝 それから、大阪の町とゆうものを知る、市電に乗ってると、よくわかるわけ
   ですわ。そのまぁ、いろいろ親しまれた市電がですな、今月いっぱいでなく
   なるわけです。
菊地 そうです。
小松 まるまる買えるんでっか?
米朝 30万円。けど、運搬費が高こつく。
小松 そこで住んだらよろしい。
米朝 そこでて、あんた、持ってってくれな、向こう困りよる。
小松 どっか置いてありまんやろ。
米朝 何日までにお引き取りくださいてなもんですわ。
小松 そやけど、売れへんかったら向こうも困るわけでしょ。
米朝 まぁ、燃やしてしまうんやろねぇ。
菊地 レールつけて走らすわけにいきませんか?
米朝 レールがないがな。
菊地 家までレール、ずーとひいていって。
小松 いや、しかし、あれやなぁ。家の茶の間であの市電、走らしよったら、子供
   達が喜ぶけどなぁ。(笑)。
菊地 (笑)。喜ぶわ、レールひいて。
小松 うちの茶の間よりだいぶ広い。(笑)。
米朝 あれねぇ、雨ざらしにしといても、何年間かびくともせえへんらしいよ。
小松 市電は丈夫にできてるらしいよ。ダンプの運ちゃんは、市電と衝突したら
   とってもかなわんゆうてた。戦車と衝突したぐらいでないと、市電て壊れな
   い……。
米朝 いろんな意味で、あれはほんとに大事な乗り物やったんやけどね。
菊地 それでは、来週もお便りをお寄せください。宛先は、大阪市北区梅田町ラジ
   オ大阪「題名のない番組」の係りへどうぞ。

♪ジャジャジャジャ〜ン、続いて出囃子、以後、交響曲第5番がBGM

菊地 題名のない番組、それでは、今夜はこのへんで。使用レコードは、ビクター
   と東芝。お相手は、
米朝 桂米朝
小松 小松左京
菊地 菊地美智子でした。