題名のない番組(再録) |
1969年4月9日放送(最終回)の再録 ♪ジャジャジャジャ〜ン(交響曲第5番)、続いて寄席の出囃子 菊地 題名のない番組 さて、いよいよ最終回ですけど、皆さんから頂きましたおもらいは、「あゆ みの箱」に入れさせていただきました。今夜のおしゃべりは、 米朝 桂米朝 小松 小松左京 菊地 菊地美智子です。 小松 やぁ、喜んでいいのやら、悲しんでよいのやら。 米朝 もぅ、わたし最終回の葉書の山や手紙を読んだりしているうちに、涙が出て きて。 小松 えっ、わろていたじゃない。 菊地 ほんと、やっぱり、こう胸がせまってくるのがありますよ、そんなん、ゆう けど。 米朝 ほんまにねぇ、人にわからんように涙をこぼし……。 小松 そういや、最終回の前に珍事がおましたな。送ってきた「時限爆弾」。 米朝 この間から予告してたらほんまに送ってきて、新聞にでかでか載ってしも た。 小松 「題なし」が社会面の3面に。 菊地 ものすご大きい写真入りで載って。 小松 我々3人の写真、出してくれれば、よかったのにな。 米朝 何かやったように思われるわ。 小松 談話で「もう止めます」てなことを。 □□□ 米朝 早くもねぇ、それに対する反応のお便りが来ています。 小松 へぇ〜。 米朝 「ようやった。最後のハプニングである。」 小松 なるほど。 米朝 それで、「これでもまだ無くすると言うのか」というのもあったし、「今度 はホンマモンや」というのもあったし。 小松 いやぁ、おかしかった、あれは段々落ちみたいでねぇ、ホンマ。最初、「放 送局に時限爆弾」。それでね、「電線が切れてた」て書いてあるでしょ。そ れで、ず〜と見ると、「ラジオ大阪」って。あれあれ、と思ったら「題名の ない番組に友人やら、こんなものが送られてくる」と書いてある。 米朝 あれで色々聞いてみたら、別にあれは危険なものではなかったらしい。 菊地 でも、刑事さんがだいぶたくさん来て。 小松 下で、刑事さんが10人くらい来てね。それからその後、テレビが押しかけ て。 菊地 うちにも電話もかかってきましたし。 米朝 今日、これまたいろんな物、頂いています。 菊地 あっ、またダイナマイト。 米朝 いや、これはお金や。 菊地 お金か。 米朝 1円玉でしょ。 菊地 これ、ダイナマイトと書いてありますよ。1円玉を300円、包みにして。 これはね、「題なし同盟共闘派泉大津本部のきむらたかふみさん」 米朝 きむらふみふみさん。 小松 はっぱたかふみ。 菊地 これ、ちゃんと時限爆弾になっていますよ、時計がついて。 小松 おまけで、箱ワンセットで来たんや。 米朝 しょうもない物ばっかり。 菊地 目録が入ってます。非常食でラーメンが3個、火炎瓶用の瓶が1個、それか らダイナマイト3本、棒が3本、それから香典が計13円なり。 小松 石が入ってる。 菊地 投石用の石ですねぇ。おかきもあります。 小松 (コンコンという音)聞こえまっか? 皆さん、聞こえまっか、これ。石と 棒の音。 米朝 それから、この人形送ってきやはったんが、羽曳野のまつまあさんという 方。我々に乞食せい、という……。 菊地 これ、だいぶ頭、薄いですね。小松さんに嫌み……。 小松 一時期ワラ人形やら、わたいの墓やら、ようけ送ってきたんや。最近ちょっ とないと思っていたら、最終回になったら、いよいよ……。 米朝 香典、みずしまあきら氏が103円。 小松 岡山のみずしまあきら。 米朝 この水引が。 小松 しょうもない! まぁ。 菊地 荷造りのひもで。 小松 ひもを丹念に糊で固めて……よう、こんなアホなことしたね。 米朝 僕の家に届いたのは、プレイボーイのヌードのところ、目ぇのところに5円 が二つ貼って、これが米朝。おっぱいのところに1円、これがミッチー。 菊地 失礼やわ、もう! 最後まで言われる。 米朝 最後は下のデルタ地帯に3円が3角形に、左京や。うまいことこれが。 小松 いやらしいな、実際。 菊地 やらしい。 米朝 春の息吹やいうて、これがヨモギとツクシと。 菊地 タンポポとお茶の種ですか。 米朝 まぁ、それから古い古い「この番組に題名をつけて下さい」というようなこ と、初めにゆうたことがある。そういうときの新聞。昭和39年。 小松 39年かぁ。 菊地 39年です、スタートしたのが。 小松 ああそうか、1964年やから足かけ5年になる。 米朝 まぁ、とにかく思い出のお便りがいっぱいある。いちいち申し上げられない んですが、ともかくなくなると言うことで、「終了の詔勅」というのを下 さった。 小松 はぁっ。 菊地 はぁっ。 米朝 みずしまあきら一代の傑作や。「終戦の詔勅」をわたしは思い浮かびます なぁ。 朕、深くOBCの大勢と番組の現状とに鑑み、非常の措置をもって時局を 収拾せんと欲し、ここに忠良なる爾聴取者に告ぐ。 朕は、題名のない番組をして、ラジオ大阪に対し、その中止宣言を受諾す る旨通告せしめたり。 そもそも、ラジオ大阪の繁盛を図り、レギュラーのギャラをはずむは、番 組開始当時よりの志にして、朕の献金おかざるところ。先に、竹本浩三の ギャラが安いといえる所以もまた、実に番組の自存と経営の安定とを庶幾 するに出て、お荷物となり、ラジオ大阪にやっかいをかけるが如きは、も とより朕が志にあらず。 然るに、放送すでに四歳を閲し、朕が米朝の奥目、左京のモク、朕が美智 子のペチャンコ、各々その個性をふりかざすにかかわらず、経営必ずしも 好転せず、放送の評判、また、我に利あらず。しかのみならず、スポン サーは次々と番組を見捨て、ギャラを脅かし、しわ寄せの及ぶところ景品 をケチるまでに至る。しかも、なお、放送を継続せんか、ついに番組の滅 亡を招来するのみならず、ひいてラジオ大阪を倒産にまで追いやるべし。 かくの如くんば、朕、何をもってかギャラをいただくラジオ大阪に謝せん や。これ、朕が、題なしをして中止宣言に応ぜしむるに至れる所以なり。 朕は、題なしとともに終始放送に協力せる聴取者諸氏に、遺憾の意を表せ ざるを得ず、題なしファンにしてパロディーを考え、投書し、没にされた る者及びその葉書の山に想いを致せば、五内ために逆らわず、かつ、採用 されながらも景品未だ受け取らざる者に至りては、朕の深く軫念するとこ ろなり。思うに、今後、題なしファンの受くべき苦難は尋常にあらず。爾 愛聴者の衷情を、朕、よくこれを知る。しかれども、朕は、時運のおもむ くところ、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、もってラジオ大阪のた めに題なしを、お開きにせんと欲す。 朕は、ここにラジオ大阪を愛聴しえて、忠良なる爾愛聴者の期待に応え、 常にラジオ大阪と共にあり。もし、それ情の激するところ、みだりにラジ オ大阪に圧力をかけ、殴り込みなどして題なしファンの信用を世界に失う が如きは、朕、最もこれを戒しむ。宜しくこそ一同子孫相伝え、かたくラ ジオ大阪の不滅を信じ、任重くして道遠きを思い、総力を次の番組の愛聴 に傾け、道義は篤くして、OBCのみを聞き、誓って他の放送局にたぶら かされず、世界の進運に遅れざらんことを期すべし。爾愛聴者、それよく 朕が意を体せよ。 プロデューサー御璽 小松 なるほどね。 米朝 名文やで。 小松 名文や。ようやった、全文でっせ。 米朝 全文ですよ。 小松 しかし、まぁ、あれやなぁ。詔勅をもって終わる番組というのも、珍しい な。もし間違ってこれを天皇陛下が聞きはったら、どない言うやろ。 菊地 (笑) 米朝 こういうふうなのがあるかと思うとね、「この番組が終わって、その次の番 組の終了はいつですか、教えて下さい」。 菊地 まぁ、冷たいですねぇ。 米朝 阿倍野市のはぎわらさん。これは我々にとっては、有り難いご声援なんや が。 小松 東京から殴り込まれまんやろ。「殴り込み七人衆」か? 米朝 そうそうそうそう。 菊地 そうです。 米朝 「題名のない番組が終了するに当たって、我々視聴者は、完全にこの番組に 満足し、この番組の視聴者であることを何よりの誇りとしている。僕は、も し新しい番組を選べと言われたら、いくたびでもこの番組を選ぶであろ う。」 菊地 あぁ、涙が出てきて……。 小松 アホやな(笑)。 菊地 あっ、そんなこと言ったらいかん。 米朝 「同様に、もしこの番組の□□□を選ぶことができるものなら、かならず米 朝、左京、美智子を選ぶ。□□□3人は、なお視聴者に効用を尽くしたいと 思っているかも知れないが、我々視聴者は、今日までの4年の間に、およそ 番組の視聴者として受けうる限りの幸福をすでに受けた。残したことがある と思ってはならぬ。とくにこのことを言っておく。これは当てつけやら、皮 肉やらではない。」 小松 えらい当て外れや。聞いている奴を不幸にしようと思っていたのに、幸福に なった人が出たとは、まあ当てが外れた(笑)。当てちょびれだな。 米朝 そういうわけで、今日は題なしの最終回でございます。まず、音楽を1曲。 菊地 はい、あと25分、もうないんですけどね。フォーク・クルセダーズの歌で す。大和郡山市のうえだまもるさんのご希望。 (「もう25分で」の曲) 菊地 弔電が一杯来てるんですけどねぇ。 小松 弔電いうのは、あまりもろたことないな。あたりまえやな、そらまぁ。 菊地 本人がもらうときには、もう、読めないんでしょ。「梅田町ラジオ大阪題な し殿。在りし日を偲び、遙かにご冥福を祈ります。」 小松 在りし日の〜というやつやな。 菊地 それを今読もうと思ったのに。同じ文章で、まるおかっていう人。 小松 ありしびの〜、はるかにごめの、すぎちょびれ。 米朝 え〜、中国の大会やってますね。 小松 はい、中全大会。 米朝 林彪老いやすく、主席なりがたし 中全大会、軽んずべからず 未だ覚めず、文化革命の夢 日本の題なし、すでに終了 小松 (笑)こりゃなるほどね。 米朝 ええねぇ。 小松 関係あらへん。考えてみると、それのあとのやつ、題なしでどう茶化される かというの楽しみやった。これから、しかし、あれやなぁ。どんな事件が起 きたら、みんな、どういうふうに聞くんやろなぁ。 菊地 ムズムズするんでしょうね。題なしに送ったら〜と思ったら。 米朝 わたしら自身が、これがあれであったならば、いいネタであろうと。 菊地 欲求不満になんのと違いますか? ひょっとしたら、それが溜まって。 小松 これで4月9日に終わってでっせ、4月10日に第3次世界大戦が始まった ら、死んでも死にきれんわ(笑)。 菊地 これはなんですか。 米朝 それは新聞の記事に誤りがあると。 菊地 「左京に米朝にミッチーにちょっと聞くけれど、酸素は燃焼するのんか? 4月5日の夕刊の第1面の『目』という欄に、いうまでもなく酸素は極めて 燃焼しやすい危険物ということになっている……。」 小松 例の東大の事件やな、医学部の高圧酸素。 菊地 これ、どうなんですか? 小松 酸素は燃えるはずがない。酸素は燃やすもんですよ、あんた。 米朝 それを新聞にそう書いてあると。こんな間違いを書いていると。 菊地 こういうものを送ってくるところも、もうないわけですねぇ。題なしがなく なると。 米朝 他の番組でも、取り上げてくれるでしょうから。 小松 どこぞでやるやろうけども、しかし、なぁ。こんな物知りがいるか? 菊地 親切に取り上げてくれる番組はもう。 小松 こんなに知っていながら嘘ばかり教えてくれる番組が他にあるかと。ええ気 なもんやな。これ、いくら、ここでええ気なもんになったって、もう、「お まえらええ気なもんや」と言うて来られへんと思ったら、ええ気になったろ か、いっちょう。 米朝 「これが没のされじまい」てな最後まで嫌み言うてる奴がある。 小松 (笑) 菊地 うまいわぁ(笑)。 米朝 伏見のにしむら□□□さん。 小松 「七つの鐘が六つなりて」というやつやな。 米朝 「もうお便りしません」て、あたりまえや。 小松 してもよろしで、別に、記念品はやらんぞ。 米朝 千葉県の□□□という方から、ごく昔の初めて公開録音をやったときの写真 を送ってきたり、「この作品、わたしが作ったんです」。処刑台とか棺桶と かいろんな物、わたしが送ったんですという方とか、そのほか、古い切り抜 きやとか、いろんな物、今週は届きましたな。 小松 しかし、中には優秀なのがありましたなぁ。常連で途中で止めた人なんか。 米朝 なかひらくん。もときよゆきという人。そういう方が、題なし傑作集を印刷 してくれはったやつやら、なかひらくんの作品集もあるし。それから、洲本 のにしまさはるさんが、自分の傑作集を集めて送ってきてくれた。こういう ものはみな取っときます。 小松 取っとかないかんね。 菊地 ほんとに、今読んでもおもしろいのがありますね。 米朝 一発ええのん紹介しようか。どこでもありますけど、なんでもよろしいか ら。 菊地 そうですねぇ。 米朝 今日のパロディは、またこれもさよならなんやけど、神戸市灘区のないとう さんという方の杜甫の「友人を送る」のパロディ。これは、よくできてます ねぇ。 暗雲北阪に横たわり 濁水氷上をめぐる この地ひとたび別れをなして 題なし万里に行く 不運勇女(勇女とはミッチーをさす)の意 落日落雁の情 手を振ってここより去れば 蕭々(しょうしょう)として左京鳴く 米朝 馬みたいにいわれとる。 小松 (笑) 米朝 蕭々と鳴くやろか? 爆笑して……。 小松 なかひらくん、もとくんの傑作ばかり。 菊地 もときよゆきくんの「貧乏」っていうあれでね。 障子破れて 桟(さん)があり 蜘蛛の巣張って シケモク吹かし 時に感じては 娘にも涙をそそぎ 別れを恐れては 妻にも心を驚かす 家賃は3ヶ月に連なり 契約 晩期にあたる 白頭かけば 更に短く すべて貧に勝えざらんと欲す 米朝 これは、ようできていますね。 菊地 杜甫の「春望」。 小松 「障子が破れて桟があり」ちゅうのね。五輪書とか、彼のは高級ですよね。 米朝 それから時勢にね、そのときのニュースに、ぴたっと来るのがあるでしょ。 小松 あります、あります。 米朝 そういうことあったあったというのね。 小松 そういうのが、だいぶある。これなんざぁ、ちょっと高級でっせ。こんな議 題、ミッチー、覚えてるか? アラビア談判破裂して ナセル乗りだすイスラエル つづいてヨルダン、シリア国 キリスト死するも彼がため マホメット死するは彼がため うらみ重なるチャンチャン坊主 タンク、タンク、タンク ミサイルじゃ、いっぱいじゃ 小松 よう、こんなアホこと憶えてとるね、実際。 米朝 公明選挙のときには、 ないしょ、ないしょ 投票するならあのねのね。 にこにこにっこり、ね、○○ちゃん。 袂にこっそり、あのねのね あたしのお願いきいてよね 菊地 なるほどね、きびしいですね、本当に。 米朝 こんなもん、ようできてるね。 小松 (産休中のミッチーの代わりに)トンちゃん(関口敏子アナウンサー)が出 てた頃の奴があるなぁ。 米朝 しばらくやっていたときね。それで、あんたがカムバックしたときに、 「このミッチーは、いつか聴いたミッチー」という。 小松 「ああ、そうだよ、化かしやの声がさえてる」って。 菊地 え? なに? バカシアの声が冴えてる? 小松 「あの丘はいつか見た丘、ああうそだよ、ほら白いおっぱいだよ」 菊地 なんで、そんな。 小松 「このミッチーは、いつか見たミッチー。ああ、そうだよ。おかあさまとサ テスタへ行ったよ」(笑)。 菊地 (笑) 小松 この人、サテスタに行くのに、お母さんと。 菊地 いつか聴いたミッチーは、いいなぁ。 小松 しかし、これはうまいなぁ。 米朝 「トンコ、トンコ」いうのも、「脱ごか脱ごかとだましておいて、あとで あっさり脱がなんだ」というのもあったしね。 小松 秀才なおもって入学をとぐ、いわんや鈍才をや、 しかるを世の人、つねに曰く、鈍才なお入学す。 小松 「歎異抄」でっせ。 米朝 地蔵和讃もあれば、義太夫まであった。 小松 義太夫、あった、あった。それから狂言がおましたなぁ。 米朝 狂言もありました。 □□□ 菊地 はい、それでは次の曲です。「悲しくてやりきれない」。 小松 次の曲て最後の曲ですよ、あんた。 菊地 あっ、最後の曲ですねぇ。尼ヶ崎のひらまつたかしさんのご希望です。 (「悲しくてやりきれない」の曲) 小松 いやぁ、しかし、4年なんぼちゅう。 菊地 足かけ5年。 小松 足かけ5年となると、だいぶん、いろんな人が育ってきているやろね。 米朝 はぁ、そうでしょうな。第一、その時分高校生やったら、今は大学卒業して る。 小松 そやけど、これ聞いて育った人は幸せやね。これ聞いとったら何が起こって も怖いことおまへん。革命が起ころうが、戦争が起ころうが、すべて茶化せ るという。幸せな人たちやな。 菊地 ニュースにはなるし。 小松 そりゃ、えろなれへんでっせ。えろなれへんけど、何も怖いことなくなる。 米朝 それは偉いことですよ。何も恐いことないちゅうのは、たいしたもんや、そ れは。 菊地 怖いものなし……。 小松 いろんなことおましたな、そう言えば。僕は遅刻で、ミッチーは中途、しば らく休み。 菊地 中途退学。違う(笑)。 小松 僕はしばらくちょっと外国ぐるぐる回ってきて休み、その間、竹本浩三はん か。米朝はんが胆石で。 米朝 小米朝(現・月亭可朝)が出てたこともあった。ハプニングで星新一が入っ てきた、永六輔や桂小米(故・2代目桂枝雀)やいろんなものが入ってきた な。 菊地 延べにしたら、ものすごいですよ、出演者の数。小米ちゃんも来たことあっ たし、我太呂(故・3代目桂文我)さんも出て。 小松 文我さんもいたし。 米朝 フラフラ〜と入って来たり(笑)。 菊地 不思議な番組ですねぇ〜。 小松 ミッチーがストで来られんと、米朝さんと差し向かいでやったこともあっ た。こっちは、もうようやく初めて□□□と思たのにな。まぁ、次から出て 来やがんねん、まぁ、じゃまで、じゃまで(笑)。 菊地 すいません(笑)。 米朝 大東市のうえのみつのりさん、枚方のおくのとしあきさん、京都の寿限無寿 限無さん、堺のわだひろおみさん、生駒の□□□さん、ご存じのおっさんや とかね。それから河内の純情むすめとか、摂津のつかもとさんとか、香川県 からの□□□さんとか。こういう方々、皆、今日はなかなか大作、色々頂い てますんですけどね、時間がないので読まれませんので、もう堪忍してくだ さい。 小松 遠くから来てましたな。都城の常連がいましたよ。 菊地 さくまえてつろうさん。 小松 それから、年寄りのこうやまきさんとか。 米朝 そうそうそう、この間も来てました。新潟県やとか、あんな遠いとこからも ろたことありました。北海道もありました。 小松 四国もおましたな。 米朝 福島区のなかいさんというのは、「菊地さん、番組の終わりに、今日、次の ことをお願いします。『またお便りをお待ちしています。』」 菊地 言いたいですね。 米朝 言うといたらええんや、あんた。いまさらこの番組に気兼ねせんでもええ。 たいがい言いたいこと言うてたんやさかい。 小松 どうやろ、お便りだけもろて、記念品だけそっと送ってたら、なんか気持ち だけどっかでやってるような気がせえへんか。 米朝 放送はせずに? 小松 さいな〜。 米朝 それを集めて本にして出す。たくさん来てますんや、作品集出せ、出版せい と。 小松 お葉書を出すと必ずシャープペンシルが来る、「たちぎれ線香」みたいなも んやな。お線香つけると三味線が鳴る(笑)。 菊地 1年ぐらいたっても、記念品だけ送ってくれいう葉書もありましたね。 米朝 そうですね。大体それぐらいになるんやないか。 小松 ひどいのあったね。シャープペンシルの芯がなくなったから、芯くれ、とい うのもあった。 米朝 今まででも2本目からは、芯だけにしたらよかったんや(笑)。 菊地 そんなひどいこと言うたら。 小松 なんべんももろてもしょうもないな、あんなもの。 菊地 最後や思って、ひどいこと言ってる。 米朝 「般若心経」のパロディが来てますよ。 小松 はぁ、ついに来たか。 菊地 般若波羅蜜多。 米朝 南無阿弥陀仏。 小松 なんぞ、鳴り物入れまっか? 米朝 コーラの瓶でも。 米朝 「摩訶般若波羅蜜多心経、抜粋」これ、よう聞いていると、意味がなるほど ちゃんとできてます。これは神戸市須磨区のふせよしさんという方。 かん 米朝 ごうさ〜ぐうじんしやん さいようた〜じ とうしょ〜ごうまいみなぼつ きょういっさいくうきん 美智子 ぼつ くいそんそうふういぼつぼつ ぼつそくぜそん そんそくぜぼつ 米朝 ぼつ、すなわち、これ、そん(没即是損) そん、すなわち、これ、ぼつ(損即是没)という……。 じょうれんていきょう やくぐ〜にゅうぜ〜 美智子 ぜしょうぼつ そんそうふうえきふうとく ふうきふうじょう ふうきんふうせん 小松 おじゅっ(住職)さんになんぼ包んだらええんや。 菊地 (笑)3円でしょ。 米朝 ……むさいむていきょうどおり 無提供ちゅうのがある(笑)。 むうがんじじぜっしん 小松 成仏しまへんで、ちゃんと読まんと。 米朝 じょうれんていきょう ほうむりやくないし むさいようかい むうむうしんやく むうむうしんじん ないしむ〜ぼつそん 小松 無没損というのええなぁ(笑)。 米朝 やくむ〜ぼつそん じんむさいえき しんどうさんにんぜぶつ 米朝 3人はこれ仏。 菊地 はぁ〜。 小松 しょうもない仏。五百羅漢みたいなもんやな。 菊地 あんまり成仏しそうもない。 米朝 ぎゃ〜ていぎゃ〜てい はらぎゃ〜てい はら 左京 ぎゃ〜てい(笑) 3人 (爆笑) 米朝 はらそうぎゃ〜てい、はら 左京 ぎゃ〜てい(笑) 小松 腹が左京(笑)。 米朝 はんにゃ〜しんぎょう〜 小松 ちゃんとまじめにやってくんなはれ。成仏できまへんで。 米朝 どうせするかい。 小松 あ〜、ありがとうございます、どうも。 菊地 これが御布施で。 □□□ 米朝 「だいたい題なしがなくなる、題なしがなくなるとゆうて、なくなった試し がないと思たら、こんど初めてなくなりました。」 小松 なくなるのに初めてやな、そりゃまあ(笑)。 菊地 何べんもなくなったら、おかしいです。 米朝 「祝 解散」。お祝いもある。 小松 なるほど。偽装解散というやつやるか。 米朝 「皆さん方もそれぞれ、本来の芸術と取り組むことができるでしょう」 菊地 本来の芸術。 小松 ミッチーの芸術て、なんや。 菊地 なんだろ。 小松 全身美容とか。 菊地 やらしい。 米朝 もうこうなったら、よその局へ行ってやれ、いうのもある。 小松 ミッチー、胃ガンやそうですわ。 米朝 本当? 菊地 はあ、そうなんですけど、題なしとともに、死ぬことになってます。 米朝 ちょっと、そんな噂は聞いたけども、ひょっとしたら、かもわからんの? 菊地 はあ、かもわからんと(笑)。 米朝 そうですか。 小松 ガンやのうて、がんもどき言うとんやけど。 菊地 (笑)もぅ、冷たいわぁ、みんな。 小松 ガンとったら、米朝さんの胆石と一緒にさせたろ、言うて喜んでまんねん、 今から(笑)。せめてガンと胆石くらい一緒にさせて。 菊地 せめて胆石でもいいから米朝さんと。 小松 そうや。 菊地 おかしい(笑)。 米朝 なんで、そんなおかしいことになってきたんやな。 小松 ガンに胆石をちりばめてな。 菊地 指輪を作って。 小松 やらしな、ほんと。 米朝 今日ここにまた、何百円かのお金が来ました。 小松 銭はどっか……。 菊地 「あゆみの箱」にもう入れました。 米朝 なんや、入れてもたんか。残ったんはこれだけでっせ。これ、あと何回か続 くもんとして、3円だけ前借りでもろといたらよかった(笑)。 小松 ほんまや。 米朝 がっくり来るんと違うかいな。 菊地 今はそんなに寂しくないけど、終わって何日かすると……。 小松 俺たちは淋しい病にとっつかれるんや(笑)。□□□引いて歩く。「あゆみ の箱」、やっぱこっち来るから……。 米朝 いや、そこへは行けへんわな。 小松 いや、最後賑やかで、よろしおましたな。このくらい野辺の送りが、これだ け賑やかやとね。 米朝 そうです、そうです。 小松 時限爆弾とですなぁ終戦の詔勅でっしゃろ、お経があって。 米朝 プレゼントいろいろあるは……。 菊地 ラーメンも来ましたし。 米朝 弔電も来たし。 小松 それで最後がいよいよあれですか。なんか、こう、ちょっと、こう。 菊地 少しくくらいシーンとね、まじめに終わらな。 米朝 まじめに終わりますか? 菊地 ほんと、長い間、ありがとうございました。 米朝 ほんとに皆様方あっての番組でございました。我々も実に勉強させてもらい ました。これはお世辞でもなんでもない。よその放送局、例えば東京なんか に行って、いつもこの番組の自慢をしてましたよ、我々は。それは確かに間 違いないことです。 小松 そうですな。向こうの玄人連中が、えらく感心してた。あんな高級な投書 が、中学生、高校生から来るんやから。 米朝 続々と届いた。 小松 やぁ、日本の将来は、少なくとも日本も強うはならへんやろけど、まぁ、安 心やな。賢いわな。 菊地 なんとなく、へらへらと。 小松 そうや。 (以後、「葬送行進曲」がBGM) 米朝 葬送行進曲? 菊地 そうです。もう、いよいよご臨終ということで。 米朝 今、お経よんだらよかったなぁ。 小松 さいな〜。こんなにたっぷり、ご会葬ありがとうございます。 菊地 ほんとにありがとうございました。 米朝 お香典も、ありがとうございました。 菊地 おしゃべりは、 米朝 桂米朝、釈の奥目。 小松 小松左京でございます。焼き場までご同行の方は、どうぞ車の方へどうぞ。 菊地 菊地美智子でした。 米朝 お供養はなんですか。 小松 葬式まんじゅう!(笑) ――― 完 ――― |